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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

生活史に寄り添った苦痛緩和 ~心の休まる時間を提供するには~

キーワード:スピリチュアルペイン価値観生活史
看護学科
富山 実有

はじめに

スピリチュアルペインとは、自分自身の存在や生きるよりどころが失われたり揺らいだりして精神的な苦悩生まれることを言う。また、スピリチュアルな領域から発生する苦痛であるスピリチュアルペインも、表現される時には身体面、心理面の苦痛、社会面の苦痛に見えたりする。

癌の進行により倦怠感が起こり、肝機能が低下したことによる肝性浮腫による体動困難や掻痒が強かったが患者の価値観を持って援助を行った。生活史に寄り添った援助が苦痛緩和にどのように影響するのか考えていきたい。

事例紹介

A 氏、85歳、男性
診断名:直腸がん、肝転移、気管支喘息
主訴:胸部不快、下腿浮腫
趣味:蘭が好きで、品評会に出品していた。

看護の実際

受け持ち当初、痛みや浮腫軽減を目的として温罨法を行うなどの援助を行ったが、患者の苦痛は消失することなく、また薬剤による疼痛のコントロールができていたため痛みの訴えはなかった。主な訴えとして、倦怠感や不安があり心を落ち着ける時間を持てていないことから苦痛に繋がっていると考えた。癌を発症し入院する以前より蘭を育てることを生きがいとしており、入院生活により蘭に触れる機会が減り、その人らしい生活を送ることが出来なくなっていたため援助として図鑑を見て蘭について教えてもらい、またボランティアの方が持ってこられている花を花瓶に生け、患者に評価してもらい病室に飾るなどの関りを持った。

コミュニケーションを通して、どのようにして蘭を育ててきたのか、その想いや背景を知り、患者の蘭への想いを表出できる時間を設けることで、その時間は苦痛表情が消失した。患者にとっての生きがいを理解し関わっていった結果、患者の心の落ち着ける時間を提供することができた。

考察

M.ニューマンは「死に逝くクライアントのリズムに添うことで安らぎと快さがあった。寄り添いは思いやりの表現ともみなされた」1)と述べている。コミュニケーションを行い患者の生きがいを理解し関り寄り添うことでその人らしい時間を持つことができると考えられる。

まとめ

「苦痛」といっても一つの面だけではなく、様々な方向からアプローチすることが苦痛を緩和するために必要なことであり、個別性に合わせた援助を行うことが大切であると分かった。

参考文献・引用

  1. 1)マーガレット・ニューマン(著)「,変容を生みだすナースの寄り添い」看護が創りだすちがい,第1版東京医学書院2009年p.76

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