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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

脊柱後彎変形と作業効率の関係性について

キーワード:作業効率円背指数課題遂行時間重心動揺
作業療法士学科
枡田 鎮/川本 実周/尾崎 智宏

はじめに

脊柱後彎変形(以下,円背)の作業効率を課題遂行時間と重心動揺を指標として,課題内容との関係性を検討した.

対象

本校作業療法士学科学生で身長160±5cm,側彎のない円背指数9.2±2.51)範囲内の本研究に同意が得られた男性5名,女性5名とした.

方法

自在曲線定規を用い,座位姿勢でC7とL4を結ぶ直線Lと,彎曲頂点から直線Lまでの垂線Hを測定し,円背指数(H/L×100)を算出した.側彎のない円背指数9.2±2.5範囲内を非円背姿勢とし,それを越えるものを円背姿勢とした.

被験者に非円背姿勢と円背姿勢で,座位でのペグ移動課題を行わせ,姿勢を非円背→円背→非円背の順にそれぞれの姿勢での課題遂行時間と重心動揺を計測しt検定を行った.

円背姿勢の課題は,対象者に体幹を最大限屈曲させ円背指数を越えた姿勢での遂行とした.座位活動中の重心動揺は単位軌跡長として記録した.姿勢の違いだけでなく,課題内容の違いによっても変化がないかを確認するため,各姿勢で操作対象物はペグ大→ペグ小の順でそれぞれ変化させ,また操作対象物の移動範囲をリーチ範囲内→リーチ範囲外の順で変化させて行った.

課題実施後には課題遂行に関するアンケートを実施し,主観的データも収集した.

結果

課題遂行時間は,全課題で円背姿勢が非円背姿勢よりも時間がかかった(p<0.01).

単位軌跡長は,リーチ範囲外のペグ大・小課題(※1)とリーチ範囲内のペグ大課題(※2)で,円背姿勢が非円背姿勢より小さかった(※1p<0.01,※2p<0.05).

アンケートから,課題難易度は操作対象が小さいと難しさを感じ,操作対象物が大きいと操作しやすいと感じていた.円背姿勢は,課題を遂行しにくい,疲れると感じる人が大半であった.

考察

円背姿勢では肩関節外転・屈曲・体幹回旋・骨盤回旋の制限だけでなく,重心の円滑な移動が妨げられるため,全課題の課題遂行時間が延長したと考えられる.リーチ範囲内でのペグ小課題では,ペグ操作を行う上肢・末梢部中心の動きとなり,体幹・中枢部に求められる動きが少ないため,単位軌跡長に有意差がなかったと考えられる.粗大なリーチ動作の運動性やペグ移動速度を上げるためには単位軌跡長が増加するが,リーチ動作の安定性やつまみ動作の正確性を上げるためには,体幹・中枢部を固定することによって単位軌跡長が少なくなると考えられる.

円背を治すことは困難なため予防が最も重要である.しかし,円背になってしまった方に対しては,作業場の高さやリーチ範囲などを対象者と一緒に見直すことで,目的の課題を対象者が満足できる形で効率的に行えるよう支援できる.

参考文献・引用

  1. 1)寺垣康裕:脊柱後彎評価を目的とした座位円背指数計測の信頼性と妥当性.理学療法科学19(2):137-140,2004.

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