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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

低負荷,低速度における上腕二頭筋の筋力増強

キーワード:低負荷低速度加圧効果筋力増強
理学療法士学科
大山 友希/建井 晴海/田中 卓也/西田 一弘

はじめに

高齢者における高負荷,低頻度の筋力増強は,筋線維が微細に損傷され,筋肉痛などが生じる.そのため,一時的にパフォーマンス低下を引き起こす可能性があり,最適な方法とは言えない.近年,低負荷,低頻度で持続的な筋収縮により筋肉内圧を上昇させるスロートレーニングが注目されている.そこで本研究では,スロートレーニングによる筋力増強の有無を明確にするべく研究テーマとした.

対象と方法

対象は同意が得られた本校に在籍する男子学生 18名とし,各6名の3群に分けた.

A 群:30%の負荷で遅い肘屈伸運動
B 群:40%の負荷で遅い肘屈伸運動
C 群:50%の負荷で遅い肘屈伸運動

週3回,4週間でトレーニングを実施.トレーニング開始日と終了日に非利き腕の上腕最大周径(屈曲位・伸展位),10kgの重錘を持ち上げる回数,1RMを計測した.手順は肘関節屈伸運動をメトロノーム12bpm(屈曲,伸展各5秒)の速さに合わせて10回3セット行い,1セット毎に1分間の休息時間を設けた.

判定は上腕最大周径と重錘を使用した肘屈伸運動の回数がトレーニング開始日より増加すれば効果ありとした.統計解析は3群間の関連を比較するためにT検定の効果判定を行い,関連係数を求めた.有意水準は5%未満とした.

結果

介入4週間後の1RM,回数,周径を測定した結果,有意な正の相関を認めた.C群で1RM平均1.85kg(p=2.81,p<0.01),回数平均5.16回(p=3.18,p<0.01),周径(伸展)1.56cm(p=2.64,p<0.01)増加し,A群B群に比べ有意差が認められた.周径(屈曲)はC群平均1.11cm(p=1.98,p<0.05)増加したが,有意差は認めなかった.A群では平均して1RM1.19kg,回数3.3回数値が増加した.

考察

本研究の結果,50%の強度で最も変化が認められた.通常,過負荷の原則により筋力増強は60%以上の負荷が必要とされている.しかし,市橋らによると50%の負荷であっても15~20秒間の低速度で収縮させれば筋力増強の効果を示している.本研究においても,1セットで合計約100秒程度の持続的筋収縮が起きており,同様の機序により各項目に増加が認められたと考えられる.しかし,本研究では30%の低負荷でも変化が見られた.これは,石井らの研究で低負荷トレーニングは,加圧効果と同等の効果が得られることを明らかにしていることから本研究においても同様のことが考えられる.加圧効果は運動時に筋血流が適度に制限されるため筋肉の低酸素化,疲労物質である乳酸が発生し筋肉に蓄積される.これによって負荷が小さい場合でも筋活動レベルが増大する作用を有している.本研究では30%の負荷量も期間を4週間と設定し実施したため,期間が不十分であったのではないかと考える.そのため,長期間によるトレーニングの実施が低負荷による更なる筋力増強の可能性を期待させる.

まとめ

本研究により,30%の負荷量では有意差が認められなかったものの,1RM,回数の平均値に増加がみられた.よって,高齢者においても効率かつ安全に低負荷での筋力増強を行うためには,長期間による実施が必要であると考えられる.

参考文献・引用

  1. 1)市橋則明:運動療法学障害別アプローチと理論と実践第2版,文光堂p225,2014
  2. 2)石井直方:低負荷でのゆっくりとした筋力トレーニングの効果と意味,Sportsmedicine18(8)15-17,2006
  3. 3)横山吉晴:加圧トレーニング,信州医学雑誌,2005

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