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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

動的バランス・踏み出し能力に影響を与える姿勢制御戦略

キーワード:動的バランス姿勢制御戦略踏み出し能力
理学療法士学科
岡田 昇樹/谷口 育子/名越 るか/藤原 秀和/川上 真和

はじめに

立位時における人の外乱刺激に対する転倒防止反応として足関節戦略・股関節戦略・踏み出し戦略の3つの反応がある.高齢者の外乱に対する反応として後方へ重心が移動する傾向があり,股関節戦略出現時に後方への姿勢制御に働く腸腰筋と踏み出し戦略時に新たな支持基底面を構成する際に活動する下腿三頭筋に焦点をあてた.これらの筋が動的バランス・踏み出し能力に対し,どのように影響を及ぼすかを検討した.

対象と方法

対象は,主旨を説明し同意を得られた本校に在籍している学生20名.徒手筋力測定を行い,足関節底屈と股関節屈曲とが共にレベル5であるものを対象とし,ランダムに腸腰筋群10名(以下A群)・下腿三頭筋群(以下B群)10名の2群に分けた.方法は,A・B群ともターゲット筋に対して10RMの強度で週2回,4週間,開放性運動連鎖にて両側下肢に運動を実施.介入前後の1RMを比較することで筋力強化を効果判定する.なお2stepテスト・functionalreachtest(以下FRT)の実施方法は従来の方法に準じて行い,A・B群の分散が等しいかF検定を用いたのち,T検定にて5%危険率で判定した.

結果

介入前のA群の1RM平均値は左33.9Kg右37.9Kg,介入後は左37.9Kg右53.4Kgで有意な差で筋力強化が認められた.介入前のB群の1RM平均値は左9.7kg右10.4Kg,介入後は左13.9Kg右15.2Kgで有意な差で筋力強化が認められた.

FRTでは,A群で介入前平均値34.3cm,介入後平均値44.9cmで10.5cm増加しており,変化率は30.68%となった.B群で介入前平均値35.7cm,介入後平均値42.6cmで6.9cm増加しており,変化率は16.29%となった.2stepテストでは,A群で介入前平均値246.6cm,介入後平均値262.5cmで16.0cm増加しており,変化率は6.08%となった.B群では介入前平均値248.9cm,介入後平均値264.8cmで15.9cm増加しており,変化率5.99%となった.なお,FRTおよび2stepテストではA・B群ともに有意差はなかった.

考察

変化率からFRTではA群の方が伸び率は高く腸腰筋が動的バランスの制御に適していることが示唆された.立位時に働く腸腰筋の機能としては下肢に対する骨盤・体幹の前傾運動と腰椎の前弯となる.佐々木らはリーチ動作では開始時から腰椎前弯が起こり体幹の前傾が起き,最終域では腰椎前弯は減少するとされている.このため腸腰筋の筋力強化により腰椎前弯域が増え,最終域到達点が伸びたことによりリーチ距離が伸びたのではないかと考える.

2stepテストは最大歩幅を測定するテストであり,高度なバランスを要する.酒井らはステップ時に足関節・股関節戦略の混合型でバランスを維持していると述べている.本研究では股関節戦略に関わる腸腰筋,足関節戦略に関わる下腿三頭筋を分けて強化したがA・B群との間で変化率に差はなかった.このことから,足関節・股関節戦略単体に焦点を当てるよりも両方に焦点を当てることでより良い結果が得られると考えられた.

まとめ

動的バランス,踏み出し能力について腸腰筋,下腿三頭筋に焦点をあて筋力強化を行い変化はあったが有意差は認められなかった.以上の事から単一筋のみでは無く複数の筋に焦点を当てたアプローチが必要であることが示唆された.

参考文献・引用

  1. 酒井美園:歩行時の外乱刺激に対する姿勢制御反応について,日本理学療法協会,2002

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