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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

浮き趾が若者に及ぼす影響

キーワード:Functional Reach Test浮き趾躓き
理学療法士学科
岡本 直也/岸田 かな/矢口 洋江/横山 彩

はじめに

近年わが国では,要支援の段階で食い止める対策が重要視されている.2016年の国民生活基礎調査において,要支援の原因は,骨折・転倒の割合が多く,転倒の要因の1つに足趾に着目した文献が多い.その内容は,浮き趾の存在が足趾の把持能力を低下させ,転倒と関連すると述べられている.また,多くの研究で浮き趾の割合は50~80%と報告されており全体的に高い.そこで,本校の学生の浮き趾の割合,浮き趾の特性について,独自のアンケートで調査し,バランス能力との関係をFunctionalReachTest(以下FRT)で比較,検討した。

方法

対象は,同意が得られた本校に在籍する学生89名(男子57名,女子32名)平均年齢21.19±5.06歳とした.本研究では,母趾,示趾に着目し,母趾は背側に90°以上反るかどうか評価を行い90°以上反った場合を浮き趾とする.示趾は割り箸を十字に組んで足底に当て,縦軸を示趾と踵に,横軸は母趾球と小趾球にそれぞれ合わせ,示趾と縦軸の割り箸の間が1cm以上ある場合を浮き趾とする.アンケートは,躓きやすい,1年以内に転倒した,肩が凝りやすいなど全9項目を「はい」「いいえ」で答える二項目選択式回答を用いた.FRTは従来の方法を用い,重心移動距離をメジャーで測定した.母趾または,示趾いずれかに浮き趾があったものを浮き趾群,ないものを非浮き趾群として,アンケート結果に関してはχ2検定を,FRTに関してはT検定を用いて検討した.

結果

今回,浮き趾と判断できたのは89名のうち,母趾47名(53%),示趾33名(37%)となり,浮き趾群は56名(62.9%)となった.そして,浮き趾群と非浮き趾群の2群間ではアンケートの9項目すべてにおいて,有意差を認めなかった(p<0.05)が,浮き趾群に多く躓いている傾向が見られた.(浮き趾群:25%,非浮き趾群:9%).FRTの平均値は浮き趾群が39.59cm,非浮き趾群が42cmで,差は2.41cmとなった.p値(0.104)<0.05で有意差はなかった.

考察

本校で認められた浮き趾群の割合は62.9%であり,先行研究と類似する結果となった.本研究ではアンケート項目にある症状と浮き趾に優位な関連は見られなかったが,結果より浮き趾群に躓きやすい傾向がみられた.平松らの先行研究では,浮き趾と転倒経験との関係性を呈しているが本校の学生は躓くことはあるが,若年者である事から転倒までには至らない傾向であったと考える.

FRTの結果,有意差はでなかったが両群の差は2.41cmとなり,浮き趾群の方が重心の前方移動距離が短い傾向がみられた.長谷川らは,浮き趾は足趾筋力および足趾の運動機能,重心の前方移動能力が低いと述べており,浮き趾の存在は重心の後方偏移を導き足趾の荷重量が減少する特性を持つと考えられる.足趾は重心の前方移動時に支持基底を形成し,足底感覚入力に基づくフィードバック制御から重心位置を調整,支持する役割を担うことが報告されていることから,浮き趾がある場合は重心移動距離が短い傾向があると考えられる.

まとめ

本研究の結果から浮き趾が若年者に及ぼす影響について有意差を認める項目はなかった.一方で浮き趾群は躓き易い傾向にあったことから,将来的に転倒・骨折を生じる可能性も有り、転倒予防の観点から早期の介入が必要であることが示唆される。

参考文献・引用

  1. 1)平松知子他:転倒予防に関する地域高齢者の足部の実態.老年看護学2005;9(2):116-123.
  2. 2)長谷川正哉他:高齢者にみられる浮き趾と足趾運動機能および姿勢制御能力について.理学療法の臨床と研究,2013,22-18.

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