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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

呼吸機能からみたポジショニングの検討

キーワード:ファーラー位ポジショニング呼吸機能
理学療法士学科
中林 恵子/澤田 亜里紗/日下 将/宮口 紘典

はじめに

ファーラー位は安楽肢位とも呼ばれ,背臥位と比べ横隔膜が下がることで肺の伸展が容易となり呼吸機能の改善に作用する.しかし臨床現場では,ベッドのギャッチアップは行われているものの,体幹の側屈や骨盤のずり落ちによりファーラー位から崩れた姿勢となっていることがある.姿勢が崩れることで呼吸機能に悪影響を与えているのではないかと考えた為,姿勢別での呼吸機能を比較しポジショニングの重要性を検討する.

対象

健常男性15名と健常女性15名の計30名.年齢は18~25歳.呼吸・循環機能の疾患,脊柱・胸郭に変形のあるものを対象除外とした.なお,本研究の目的,内容を十分に説明し紙面にて同意を得た後に測定を行った.

方法

呼吸機能はスパイロメーターを用いた.測定は①ファーラー位(45°のギャッチアップ+両膝関節軽度屈曲位)②体幹右側屈位③体幹左側屈位④下方にずり落ちた姿勢(体幹屈曲位)の4つの姿勢で行った.検定は①ファーラー位と②③④の姿勢を比較しそれぞれT検定を行った.

結果

肺活量はファーラー位と比較して,体幹右側屈位,体幹屈曲位で有意に低下していた.しかし,体幹左側屈位はファーラー位と比較すると,肺活量の平均値が高くさらに有意差を認める結果となった.1回換気量はファーラー位と比較して全てにおいて平均値が高くさらに有意差を認める結果となった.

考察

肺活量の結果より,左側屈位はファーラー位と比較すると有意に増加していた.予備呼気量の平均値はファーラー位と比較し左側屈位が大きい結
果となりこれが肺活量を多くしている因子であった.解剖学的に横隔膜には左右差があり左側に比べ右側が高位となっており,左側屈位を取ることで左側の胸腔内圧を高め易くなり呼気を容易にしているのではないかと考える.

1回換気量の結果よりファーラー位から逸脱した姿勢は1回換気量の増加に関連することが明らかとなった.その要因として,酸素消費量の増加が考えられる.藤澤らは運動負荷に対する換気量の増加は1回換気量の増大から始まることを述べている.ファーラー位は安楽肢位であることや呼吸機能改善に作用すると言われているため酸素消費量は少ないと考えられる.それに比べ,ファーラー位から逸脱した姿勢は左右の胸壁運動の変化や腹腔内圧の上昇や呼吸筋収縮率の低下が起こる.さらに身体の筋緊張を高めるとともに,呼吸時に余分な筋力を使用しているものと考えられる.そのため,ファーラー位と比較すると酸素消費量が増加しているものと考えられる.

結語

肺活量の結果よりCOPDなどの呼気に問題がある症例に対しては左側屈位により呼吸機能が改善されることが示唆される.また,1回換気量の結果より正しいファーラー位のポジショニングは酸素消費量を減少させ身体への負荷を軽減することが示唆される.

参考文献・引用

  1. 1)松本浩実:ギャッチアップ座位のずり下がり姿勢が呼吸筋活動とエネルギー消費に与える影響,理学療法科学第23巻5号,2008
  2. 2)藤澤宏幸:運動時の呼吸循環応答,理学療法の歩み第26巻1号,2015

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