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2018年度 課題研究発表会
口述演題

変形性膝関節症による ADL 低下した患者の看護 ~生活史に着目をし、寄り添うことで意欲の向上に繋がった事例~

キーワード:QOL慢性疼痛生活史
看護学科
中野 こずえ

はじめに

変形性膝関節症はいまやわが国では高齢化社会に伴い変形性膝関節症の患者数は年々増加している。変形性膝関節症は、関節変形と疼痛により患者の生活の質(QOL)及び日常生活動作(ADL)を著しく低下させ社会問題となっている。また、老年期は加齢に伴う心身の変調や社会的環境など様々な変化への適応が課題となる時期でもあり、心身の変調によってもたらされる疼痛は、生活の継続を阻害する影響要因となると考えられ、高齢者の特徴と疼痛の基礎的な理解を持ち、生活者としての視点を視野に入れ、より良い医療・ケアを目指し関わっていくことが望まれる。

今回、痛みについて看護を行ったが、患者の生活史に視点を向け関わることで気持ちの変容ができたことについて考察を行う。

事例紹介

A氏80歳代女性独居。両変形性膝関節症自宅トイレで転倒になりADL低下車椅子全介助となり在宅での日常生活困難のためA病院に入院となる。

看護の実際

A氏は足首、足背の痺れと疼痛を訴えており常に痺れがあり、とても苦痛だと言って臥床が続いていたため痛みによる問題ばかり目を向けフェイススケールで評価をし、援助では足浴や温罨法を行ったが一時的な効果があったがADLの向上や意欲向上にはつながらなかった。関わりの中で、「自宅に帰りたいこの先を考えると不安で仕方がない寂しい」と表出があった。そこから疾患による痺れと寂しいという思いがどのように関係しているのかということを考えた。以前は社交的で他人と繋がりがある生活をしていたと情報を得た。そこで、A氏が持つ力や生活史や強みを引き出すことに視点をあてて関わった。コミュニケーションを通して趣味が生け花だということを知り病院内の庭園へ散歩を行ったり、押し花をするなど関わりを持った。

その関わりのなか、心にためておられた感情を表出するようになった。

関わりを持っている間は足首、足背の疼痛と痺れの発言は見られなかった。実習後半には自ら「散歩に行こうかな」と発言が見られた。こうして想いを傾聴し関係性を築いた結果、本人の意欲向上に繋がった。

考察

A氏の疼痛や痺れに対して目を向けていたが視点を変えて生活史や強みに焦点をあて想いに寄り添い関りを持ったことで意欲向上に繋がりそのひとらしさを取り戻すことができたと考える。スミスは心を込めて寄り添うことは変容をもたらす関係と述べている。

また、高齢者は長年培った人生経験から、多様かつ個別的な背景を持っている。そのため、その人の対話、十分な関わりを持つことで患者の思いを知り生活史から入院生活における楽しみを見出すことでA氏は意欲的に変容したと考える。

まとめ

看護は患者の思いを理解し寄り添うことでQOLの向上や生きる意欲につながり、かかわりの中で疾患による疼痛も和らぐということが分かった。

参考文献・引用

  1. マーガレット A ニューマン 千葉看会誌 VOL.16NO.1 2010.8

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