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2018年度 課題研究発表会
口述演題

日刊工業新聞社賞

脳性麻痺の患児の看護 ~個人の特性に応じたアプローチの必要性~

キーワード:快・不快成長発達脳性まひ
看護学科
萩原 さくら

はじめに

脳性麻痺とは、「未熟な脳の欠陥または損傷による運動や姿勢の障害」と定義づけられている。運動・知的発達遅滞があるため長期入院を余儀なくされている8歳の男児を受け持った。言語的に伝えられない感情を、発声や表情で快・不快を訴える児と対面し、児の特性に応じた援助でアプローチを行った。その結果、様々な快の表出を促すことができたため、この事例について報告する。

対象と方法

対象:A君8歳男児
診断名:脳性麻痺
経過:生後5か月頃に低酸素性虚血性脳症を発症し、痙直型脳性麻痺となる。明暗分かる程度の視覚障害があるが、聴覚・触覚は発達している。日中は院内学級に通っている。実習期間中に夏休みに入り、日中の刺激が少なくなっている状態であった。

結果

まず、A君の特性を理解するために院内学級の見学を行い、先生の働きかけや他の児との交流によって得られる反応の観察を行った。また、日常生活援助を実際に行いながら、生活リズムの把握や快・不快のA君なりの訴え方を理解していった。A君は視覚障害があるものの、聞こえてくる人の声や音・タッチング等、触れたものに対して敏感に反応があることが分かった。

夏休みに入り、日中の臥床時間が更に増大し、人との関わりや刺激が減っている状態にあったため、離床と刺激を与える援助を計画し実施した。学校のある日は毎日車椅子に乗るため、休み中も車椅子へ移乗してテラスへ散歩に行くことにした。外に出て風や光を浴びることで、不思議そうな表情や笑顔がみられた。タッチングを交えた読み聞かせや絵の具を直接使った感覚遊びでは、声を出して笑ったり瞬きをしたり、という反応がみられた。

他にも、母親が持ってきた音楽をベッドサイドで流すことで、普段はみられないリラックスしたような表情が見られた。別の日には、受け持ち患児以外も一緒に集まり、効果音・感触を用いた読み聞かせを行った。これらの刺激に対し、A君からは笑顔や発声、時にはリラックスしたような表情など様々な反応がみられた。

考察

A君との関わりの中で聴覚・触覚に働きかけることで、A君は喜びを感じ快の感情の表出に繋がっていると考えた。また、聴覚・触覚といったA君の興味関心に働きかける特性に応じた援助を行うことで、A君の成長発達を促す援助に繋がっていったといえる。

今回は院内学級が夏休みであったことから、学校と同じ時間に活動することで生活リズムを整えたり、声掛けやタッチング・他の児との交流などの関わりを行ったりしたが、これらは継続して関わっていくことで、成長発達の促進に繋がっていくと考える。

まとめ

A君との関わりの中で、A君にとっての成長発達促進の援助とはなにかを考え、視覚障害があっても聴覚・触覚といった興味があることを伸ばし
ていくことの大切さを学んだ。対象にとって必要な援助は何かを考えそれを実施していくことが求められる。

参考文献・引用

  1. 北島善夫:重症心身障害児・者における期待反応の発達と援助,風間書房,2009.

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