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2018年度 課題研究発表会
口述演題

滋慶教育科学研究所 奨励賞

オーラルディアドコキネシスの教示方法および測定方法について

キーワード:オーラルディアドコキネシス教示方法測定方法
言語聴覚士学科
山本 那津子/西山 のぞ美

はじめに

2006年の介護支援事業の3本柱の一つに口腔機能向上が挙げられている.口腔機能は,運動機能向上や栄養改善にも影響を及ぼし,日々の食生活や会話,健康維持など介護予防においても欠かせない.その口腔機能向上の評価の指標にオーラルディアドコキネシス(以下ODK)がある.ODKとは,パ,タ,カを出来るだけ速く発音し,平均音節数や聴覚印象により,口腔機能を評価する方法である.しかし,教示方法や測定方法は未だに統一されていない.そこで本研究では,ODKの教示方法や測定方法の違いにより,有意差が認められるか検証を行った.

方法

専門学校生27名を対象とした.教示方法は3種類の教示を用意した.教示1は「出来るだけ速く,区切りながら,繰り返し言う」,教示2は「出来るだけ速く,10秒間,繰り返し言う」,教示3は「正確に,出来るだけ速く,一息で続く限り長く,繰り返し言う」である.被験者の発話の記録をICレコーダーを用いて録音し,音響解析装置により,平均音節数を測定し,各教示方法の分散分析を行った.測定方法については,ペン打ち法,電卓法,の2種類を用いて測定を行い,その際,ICレコーダーにて録音し,音響解析装置で得られた記録(以下IC法)と2種類の測定方法の差異の比較検討を行った.

結果

教示方法では,教示3において平均音節数は分散分析にて有意な低下を認め,要因を分散分析と測定時の現象で分析した.その結果,教示1と2との間には有意差を認めなかった.また,測定時の現象では,教示3にて明らかに教示を理解していないケースが6件みられた.さらに,音響解析した音声をきいてみると,教示2,3では不明瞭な構音が多くみられた.測定方法では,ペン打ち法,電卓法ともにIC法との一致率の低さを認め,ミスカウント数とIC法との値の分析を行った.その結果,ペン打ち法,電卓法ともにIC法にて6回/秒以上であった発話速度を記録する際にミスカウント数の増加を認めた.

考察

教示方法は「正確に」よりも「区切る」と指示した方が良いと思われる.教示3に関しては,指示する要素が多く,口頭指示のみでは理解しにくいと思われる.よって,高齢者が対象となると,より教示理解の困難さが予想される.従って将来臨床を行う際には,口頭指示だけではなく,視覚手段など対象者に合わせた配慮が必要であると思われる.測定方法に関しては斉藤らの報告によると,ヒトのタッピングの限界は6.3回/秒となっている.また,小澤らの報告によると,ペン打ち法,電卓法ともに同様の結果が得られるであろうと述べられている.このことから,被験者の発話速度が6秒/回未満であること.さらに,検者が不慣れであった為,練習を行えば,より測定の精度が上がると思われる.

まとめ

教示方法については,相手に理解しやすいような視覚提示などの心がけを行いながら,臨床を進めていきたい.測定方法については,練習をしっかり行い,臨床での測定に臨みたい.

参考文献・引用

  1. 小澤由嗣,城本修:発声発語器官の交互反復運動の教示方法の検討.広島県立保健福祉短大紀要2〔1〕:39-43.2007.
  2. 齋藤琴子,丸山仁司:測定部位の差異による上肢の敏捷性および同調性の影響.理療科.23(1)139-143.2008.

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