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2018年度 課題研究発表会
口述演題

新規ユニバーサルスポーツの考案 ―スポーツで心と体を健康に作業療法の視点から―

キーワード:ユニバーサルスポーツ日常生活動作
作業療法士学科
虎尾 駿/佐々木 絵美/竹内 章子/藤岡 直樹

はじめに

作業療法士を目指す上で,対象者のQOL向上のために何ができるのかを考え,その一つとして,楽しみながらも日常生活動作(以下,ADL)に波及効果が期待される,ユニバーサルスポーツに着目した.本研究では,障がいの有無・年齢等に関係なく楽しめる新規ユニバーサルスポーツ「バッグオン」を考案した.また,試行中の筋活動測定によりADLへの有用性も検討した.

方法

(対象者)デイサービスセンター(以下,施設)利用の高齢者5名および健常60歳代男性1名.
(材料)バッグオン
(手続き)ユニバーサルデザインの原則を基にスポーツとしてのゲーム性も加えて,的あての要領で得点を競う独自のスポーツ「バッグオン」を考案し,実際に施設にて実施した.また,椅子座位でのバッグオン試行中における筋活動測定を行った.目的筋は,お手玉投てき時における肩関節屈曲筋である三角筋前部繊維および前傾姿勢時における股関節屈曲筋である大腿直筋とした.
(分析方法)対象者よりバッグオン実施後の感想の聞き取りを行った.また,筋電図波形より筋活動の有無の確認を行った.

結果および考察

バッグオンのユニバーサルスポーツとしての利点について下記の通り考察した .

・立位,椅子座位,車椅子座位での参加が可能であり,対象者が幅広い(公平な利用).
・台の位置や投てき距離等で,難易度の変更が可能である(利用における柔軟性).
・一度台に乗っても,それ以降に投げたお手玉がぶつかり,台から落下することがある.さらに,直接台に乗せるだけでなく,壁に一度あてて台に乗せることもできる(ゲーム性).

また,施設での実施後聞き取りより,楽しかった,続けてやってみたい,もっと練習したい等の感想が得られたことからも,バッグオンがユニバーサルスポーツとして機能する可能性があることが示唆された.さらに,筋活動測定では,バッグオン試行時における三角筋前部繊維および大腿直筋について,筋活動が認められた.肩関節屈曲運動はADLにおける上肢使用場面において不可欠である.また,股関節屈曲運動は特に椅子座位からの立ち上がり時や歩行時において必要となる.

まとめ

以上より,バッグオンは余暇を楽しむユニバーサルスポーツだけでなく,各動作が様々なADLにつながり,日常で困難な動作の維持・向上につながる可能性があることが示唆された.バッグオンの普及を目指すにあたり,まず詳細ルール,箱の配置,大きさ,投てき距離等の標準化が必要である.また,今回測定した以外の筋活動やその他心身機能に与える影響も検討が必要である.上記につき,様々な年齢層や障がいを背景とする対象者に試行する中で確立し,スポーツ以上の有用性について今後も研究を進めたいと考える.

参考文献・引用

  1. Ronald L. Mace,“UNIVERSAL DESIGN Barrier Free Environment For Everyone,”DESIGNERS WEST,vol.33,no.1,1985.

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