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2018年度 課題研究発表会
口述演題

運動前における寒冷刺激の有用性の検討 ~最大筋出力の関係性に着目して~

キーワード:寒冷刺激最大筋出力運動神経興奮性
理学療法士学科
中村 俊介/福田 裕隆/前田 弘樹/山下 真穂

はじめに

最大筋出力の促通を目的とした,ホットパックなどの温熱刺激の有用性は広く認知されている.しかし,最大筋出力の促通を目的とした寒冷刺激の有用性に関しては,短時間の寒冷刺激が有効であるといわれているが,詳細な施行時間までは明らかになっていないのが現状である.よって寒冷刺激による最大筋出力の促通,抑制に関する時間的変化について検討を行う.

対象と方法

本校に在籍する学生の中でも日本肥満学会が提唱するBodyMassIndexが18.5以上,25未満の標準型体型である男性12名,女性12名を対象とした.今回,最大筋出力の効果判定に最大トルク値を用いた.対象者24名に対して等運動性機器(以下,バイオデックス)を用いた膝伸展の最大トルクの測定を行う.筋疲労による影響を考慮し72時間の間隔を設け測定を行う.その際に膝の伸展運動に関与する大腿四頭筋に対してアイスパックを用いた寒冷刺激を施すことにより,寒冷刺激が最大筋出力に与える影響について考察する.MichelleH.Cameronによると5分以下の寒冷刺激を加えた直後は運動神経興奮性の亢進により筋出力の増加が認められている.我々,研究者4名による事前の施行結果は,3分以内の寒冷刺激では最大筋出力は増大傾向,4分以上の寒冷刺激では最大筋出力は低下傾向を示す結果となった.よって,本研究においては,各対象者に施す寒冷時間は2分間,3分間,4分間とし,寒冷刺激による最大筋出力の促通,抑制に関する時間的変化について検討を行う.寒冷のみの外部刺激による影響を計測する為,声掛けは行わないこととする.

結果

2分間の寒冷刺激を施行した対象群は施行前と比較し60deg/sでは最大トルクが平均+11.55Nm,180deg/sでは平均+3.2Nmと上昇した.T検定を実施したところ,P値が0.09となった.3分間の寒冷刺激を施行した対象群は施行前と比較し60deg/sでは最大トルクが平均-27.7Nm,180deg/sでは平均-3.12Nmと低下した.T検定を実施したところ,P値が0.11となった.

また4分間の寒冷刺激を施行した対象群は施行前と比較し60deg/sでは最大トルクが平均-33.2Nm,180deg/sでは平均-24.1Nmと低下した.T検定を実施したところ,P値が0.006となった.

考察

事前研究より,3分間以内の寒冷刺激では,最大筋出力は上昇し,それ以降は下降するとの仮説を立てた.2分間の寒冷刺激では施行前と比較し最大トルクが上昇し,寒冷刺激が促通作用に働くことが示唆された.3.4分間の寒冷刺激については,両者とも下降傾向を示し,寒冷刺激が抑制作用に働くことが示唆された.しかし,3分間の寒冷刺激については,統計学上有意差は認められなかった.MichelleH.Cameronは寒冷療法に関して,運動神経の興奮性に関与し筋力の増加・減少の両方に関連すると述べている.本研究より,2分間の寒冷刺激では,運動神経興奮性が亢進したことにより最大トルクの上昇が見られたものと考える.4分間の寒冷刺激では,運動神経興奮性が低下したことにより,最大トルクが抑制されたものと考える.

まとめ

2分間の寒冷刺激では最大トルクは上昇したことから,最大筋出力の促通を目的とした寒冷刺激の有用性が認められた.一方で,4分間の寒冷刺激では最大トルクが低下したことから,抑制を目的とし施行する場合は有意性が認められた4分間以上の施行が望ましいといえる.

参考文献・引用

  1. MichelleH.Cameron:EBM物理療法原著第4版,p143,p162医歯薬出版,2015

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