menu

2018年度 課題研究発表会
口述演題

「バランス能力の圧迫刺激による効果・リズミックスタビ ライゼーション効果の相互比較について」

キーワード:バランス能力ファンクショナルリーチテストリズミックスタビライゼーション
理学療法士学科
川上 祐哉/石谷 崇朗/徳橋 直人/伊田 雄大

はじめに

理学療法における手技のひとつに固有受容性神経筋促通法(以下PNF)がある.そのPNFの特殊手技にリズミックスタビライゼーション(以下RS)があり,安全,手軽に実施出来き,対象の筋へ等尺性収縮を用いることから筋力増強も見込める.本研究では,このRSを用い,バランス能力向上の有用性を検証することが目的である.また,比較対象として,股関節周囲にセラバンドを巻き求心性入力の増大により運動制御機能を改善した状態を挙げる事とした.

対象と方法

対象は18~21歳の男女20名(男女比11:9),基本的に健常者とし,整形疾患、腰痛症等の者は除外する.本研究では固有受容器への圧迫を弾性包帯よりも手軽に実施可能なセラバンドとした.方法は、まず素の状態(A)と,セラバンドを装着した状態(B)のファンクショナルリーチテスト(以下FRT)を同日に測定した.その翌週からRSを週に2回ペースで2ヶ月間行い,静的バランス能力向上を図った状態(C)で再度FRTを測定した.A・B・Cの対象は20人で,全員が訓練と測定を行なっている.RSの訓練は1回の実施時間を2分とし,膝立ち位にて股関節の動作筋(大腿四頭筋・中殿筋・大殿筋・ハムストリングス・股関節内転筋群)にターゲットを絞った。RSの負荷は、骨盤に対して骨盤右前側部から水平に体軸中心方向にかけ,次に左前側部,左後側部,右後側部へと変化させ,2~3周後に逆回転させるように行なった.1ヶ所の負荷をかける時間は2~3秒とし,施行時間は予備実験でボルグ指数13となった2分を基準とした.統計解析手順としては,各測定値をT検定にて①A-B、②A-C、③B-Cの有意差を比較検討する.

結果

FRTの結果から,T値を算出した結果,①0.570,②0.857,③0.193であった.T検定における5%危険率は2.306であることから,①②③いずれも低値となり,初期値:RS訓練後,初期値:セラバンド使用時の有意差は無かった.また,RS訓練後:セラバンド使用時の有意差も無いという結果となった.

考察

以前より弾性包帯における運動制御機能向上は知られているが,本研究におけるセラバンド装着での標本群では初期値との差異を認めなかった.また,トレーニング後の数値も初期値と差異が無く,いずれも統計学上の効果は無いという結果となった.これは,もともと十分に筋力があり,筋出力の発揮も問題のない若年層だった事が要因として挙げられる.また,RSのトレーニング期間や方法の設定が十分でなかった可能性がある.ただし,トレーニング後に数値が上昇したものを調べてみると女性が6割とやや多く,筋力が低い者に対してRSトレーニングが有効である事が伺える.また,立位でのバランス能力に関係の深い足関節戦略のトレーニングと比較するなど,対象を広げることを今後の課題としたい.

まとめ

本研究では股関節動作筋に対してRSを行なったが,予測した結果とはならなかった.しかし,6割の女性に数値の上昇が見られたことから,RSの効果は筋力低下した者へのアプローチとして期待はできる.

参考文献・引用

  1. 上原貴廣ほか : 弾性包帯による圧刺激が膝運動認 知からトルク発生時間までに及ぼす影響につい て , 第 42 回日本理学療法学術大会 , 2007

ページトップへ戻る

close