menu

2017年度 課題研究発表会
口述演題

健常者における Rey-Osterrieth 複雑図形検査および Benton 視覚記銘検査の標準データとその相関に関する一考察

キーワード:Benton 視覚記銘検査Rey 複雑図形検査標準データ
言語聴覚士学科
日下部 珠代/谷岡 和也

はじめに

Rey-Osterrieth複雑図形検査(Rey-OsterriethComplexFigureTest,以下ROCFT)は,視覚性記憶などの評価として臨床で使用されている.検査手順は,無意味かつ複雑な図形を提示し模写,一定時間後に再生する検査である.

一方Benton視覚記銘検査(Benton Visual Retention Test,以下BVRT)も,同様に視覚記憶などを評価する検査法であり,図形を提示し一定時間後に再生するものである.

両検査はいずれも高齢者から小児までを対象に,視覚性記憶能力などを簡易に評価する検査として用いられる検査であるが,日本人の場合英語圏での基準データとは異なるという報告も多く1),また両検査間の相関についての報告はない.

今回の研究では,若年層の健常日本人の標準データの検証および,両検査データの相関関係の有無の検証を目的とし取り組んだ.

対象と方法

年齢18~24歳までの本校学生18名(女性9名,男性9名)を対象とし,検査はすべて個室で行い,一対一の対面法で実施した.実施手順は山下2)の報告に沿い1ROCFT(模写課題)2H.N.利き手テスト3ROCFT(3分後再生課題)4MiniMentalStateExamination(以下,MMSE)(模写課題を除く)5ROCFT(30分後再生)6MMSE(模写課題)7BVRTの順で実施した.なお分析にあたっては,H.N.利き手テストにおいて右利きであった被験者計15名(平均年齢18.9歳,女性8名,男性7名)を分析の対象とした.

結果

ROCFTの採点は,Taylorの36点法に準拠して行った.ROCFT模写課題,3分後再生課題,30分後再生課題,BVRT正確数の関係について,スピアマンの順位相関係数によって検討したところ,ROCFT3分後再生課題と30分後再生課題の間に高い相関(r=0.98)が認められた.一方,BVRT正確数とROCFTの各点数との間に相関は認められなかった.

考察

ROCFTにおいて3分後再生課題と30分後再生課題の間に相関が認められたことから,18~24歳の健常日本人では,3分後に再生した情報を30分後もほとんど失わないという事ことが示唆された.

また,今回BVRTとROCFTとの間に明らかな相関は認められなかったことから,両検査は同列の視覚性記憶の評価法ではなく,異なる要素を含む能力を評価している事が推測された.

まとめ

BVRTとROCFTの標準データおよび両検査の相関を検討した.今後,さらに対象者数を増やし検討を加えることが必要である.

参考文献・引用

  1. 1)滝浦孝之:日本におけるベントン視覚記銘検査の標準値:文献的検討.広島修道大論集,人文編48(1),273-313,2007
  2. 2)山下光:本邦成人におけるRey-Osterrieth複雑図形の基準データ.精神医学,49(2);155-159,2007

ページトップへ戻る

close