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2017年度 課題研究発表会
口述演題

ペーシングボードの使用のイメージが健常発話者の音読速度に与える影響

キーワード:ペーシングボード心的イメージ音読速度
言語聴覚士学科
藤井 佳穂/小谷 匡宏

はじめに

脳血管障害やパーキンソン病等により舌や口唇に運動障害が生じ,構音操作が不正確となる運動障害性構音障害を伴うことが少なくない.また,彼らはコミュニケーション場面で病前と同様の速度で発話するため,聞き手はより了解できない要因になっている.

発話速度の低下を目的として,ペーシングボード(PB)が一般に用いられ,その使用効果は認められている1).しかし,日常会話でのPB使用は大きすぎることや,小型PBでは振戦を伴うパーキンソン病患者の使用は困難であるなどの問題がある.また,PB使用の心的イメージで発話速度の効果を検討した報告は少ない状況にある.

本研究の目的は,健常発話者で,自然状況下,PB使用時,PB使用の心的イメージ下の3条件で長文の音読速度を測定し,PB使用の心的イメージでの音読の効果を検証することである.

対象

研究の主旨を説明し同意が得られた健常発話者20名(男10名,女10名)を対象とし,吃様症状や手指の震えがある者は除外した.

方法

被験者に座位をとらせ,長文「北風と太陽(223モーラ)」の音読練習後,2回目の音読を「自然状況下の音読」とした.次にPB(エスコアール社製)の使用を指導し練習後の音読を「PB使用時」の音読とした.その後PB使用をイメージさせ音読させた「PBイメージ下」.3条件の音読をICレコーダーで録音し,1秒当たりのモーラ数を音読速度として算出した.

解析

音読速度を「通常」「PB使用時」「PB使用イメージ下」の3条件で分析した.解析はSPSSver24を用い正規性をShapiro-Wilkで検討し正規分布を確認した.その後,一元配置分散分析を行い,有意水準5%未満とした.

結果

平均音読速度は,通常で6.66±0.73,PB使用時で2.69±0.29,PB使用イメージ下で3.29±0.75モーラ/秒であった.

PB使用時では通常より音読速度を有意に低下させ(p<0.05),PB使用イメージ下も同様に有意に音読速度を低下させた.3条件による音読速度はF(2,57,)=235.07で,0.1%水準で有意であった.

考察

PB使用イメージ下での音読は,PB使用時と同様に,音読速度を有意に低下させる効果を認め,PB使用のイメージ習得は,実用的な訓練方法である可能性を示唆した.

今後は,実際の日常会話場面での効果や,持続的効果の有無について被験者数を増やして検討することが必要と考える.

参考文献・引用

  1. 1)西尾正輝,田中康博ら:Dysarthiraの言語治療成績.音声言語医学,48;215-224,2007

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