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2017年度 課題研究発表会
口述演題

筋力トレーニングと温熱療法を用いた腹部周径の変化

キーワード:温熱刺激筋力トレーニング腹部周径
理学療法士学科
前田 喜一/荒谷 直輝/岡野 裕樹/嶋田 萌/丸山 啓太/宮崎 歩/渡部 拓未

はじめに

メタボリックシンドロームとは,1)内臓脂肪の蓄積,2)脂質代謝異常,3)高血圧,4)耐糖能異常などが重複することによって動脈硬化を基盤とした様々な疾患が発症しやすい状態であり,現在,我が国の保健・医療行政における重要課題として位置づけられている.この対策として運動習慣の普及への取り組みが挙げられるが,運動に対する抵抗感を抱く人は少なくない.一方,物理療法である温熱療法は,古くから痛みの軽減や循環の改善などを目的に利用されてきたが,その効果に基礎代謝量の増加があることから,温熱刺激を利用し効率よく脂肪の減少を行うことができると考える.そこで本研究は温熱刺激の有無で腹部周径がどのように変化するのか調査しその効果を明確にすることとした.

対象と方法

本研究は賛同を得た本校学生21名に対し,初回時の腹部周径が一緒となるようマッチング技法にて温熱群8名(平均腹部周径79.15cm)と非温熱群13名(平均腹部周径79.70cm)の2群に分け,シットアップ,レッグレイズ,温熱刺激(ホットパック)を週2回4週間の期間で実施した.なおシットアップとレッグレイズは徒手抵抗により10RMの負荷で各種10回を3セットずつ行い,温熱刺激の加え方は先行文献に習いホットパックを腹部に乾熱を用いて運動後15分間行った.

結果

介入から4週間後の腹部周径を測定し,その変化率の平均で表すと温熱群は平均-3.46cmの腹囲の減少がみられた.それに対して,非温熱群では-1.20cmの腹囲減少がみられ,温熱群の方が平均で2.26cm多く減少していた.

考察

従来,温熱刺激は組織温度が1°C上昇すると約13%の基礎代謝が上昇するといったファント・ホッフの法則が知られているが,近年,ラットを用いた鈴木らの研究では「温熱刺激は筋タンパク合成を促すとともに,脂肪細胞から分泌されるアディポカインを主成分とするアディポネクチンを増加させる」ことを明らかとしており,このアディポネクチンは損傷血管の修復や骨格筋への糖の取り込みや,脂肪燃焼を促す作用を有している.従って,温熱刺激が脂質代謝を亢進させ腹部周径に差をもたらせたものと考える.また,運動後に温熱刺激を加えたことで自律神経の交感神経の活性化が起こり,更なるエネルギー消費に繋がったものと考える.

今研究では筋力トレーニングの効果としては結果が少ないと言われる週2回の頻度で行っており,頻度を増すことで更なる効果も期待できるものと考える.

まとめ

今研究にて腹囲に対する筋力トレーニングは温熱刺激の併用により効率よく脂肪の燃焼を行えることが示唆された.

参考文献・引用

  1. 鈴木美穂:骨格筋組織内脂肪及びアディポネクチンに対する温熱負荷の影響,理学療法学,2009田中一成:メタボリックシンドロームに対するリハビリテーション医療介入,日本職業・災害医学会会誌,2010

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