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2017年度 課題研究発表会
口述演題

起立動作直後の重心動揺から見た手すりの検討

キーワード:手すりの種類立ち上がり直後の重心動揺関節モーメント
理学療法士学科
飯田 和秀/安養寺 幸拓/石井 竜幸/川原 航輝/木村 優仁/松本 颯太/三谷 優佳

はじめに

病院や施設,自宅等において複数の手すりが設置してあるが,立ち上がり動作はもちろんのこと,立ち上がり動作直後の静止立位を支持する環境を構築できれば,歩行や排泄など次の動作へスムーズに移行可能であり,転倒・骨折を大幅に減少することに繋がると考え,患者の行動を支持する手すりの種類で最適なものはどれかを調査することが本研究の目的である.

対象と方法

本研究に賛同を得た者からランダムに選出した利き手が右である身長に格差がない20歳代男性15名,女性15名の計30名を対象とした.方法としては,高さを床から45cmの座面と設定し,手すりの位置は横型手すりにおいては立位時被検者の股関節大転子部の高さに,縦型手すりにおいては座位の状態で前方に手を伸ばし肘が30度程度屈曲する位置で合わせ設定した.その上で,縦型手すり,横型手すり,手すり無しの3つパターンにて立ち上がり動作直後の立位保持5秒間を重心動揺計(ユニメック社UM-BARII)にて総軌跡長(以下,総長とする),前後方向の軌跡長(以下,前長とする),左右方向の軌跡長(以下,左右長とする)を求め,重心の動揺が少ないものがより安定した立位と定め計測した.なお,手すりの直径は縦型も横型も同じものとした.

結果

縦型手すりの重心動揺計測定では総長は176.78mmであり,前長は71.68mm,左右長143.09mmとなった.横型手すりでは総長195.32mm,縦長90.62mm,左右長151.35mmであり,手すりなしでは総長206.77mm,縦長94.38mm,左右長159.28mmであった.以上の結果から縦型手すりにおいて重心の移動距離を表す総軌跡長がもっと少なく,また前後方向の揺れにおいて安定した結果が得られた.

考察

今回,縦型手すりにおいて総軌跡長と前後方向の軌跡長が横型手すりよりも低値を示したことは先行文献と同様の結果であり,立ち上がり動作は前上方に重心移動が必要で,縦型手すりが「身体を引き上げる」運動に関して,重心の前上方移動を直線的に補助することが可能であり,重心の変化量が減少することが考えられる.また,関節モーメントの観点から,股及び膝関節は殿部が離床するまでは屈曲方向,その後伸展方向に,足関節は離床前では背屈方向にその後は底屈方向に働くが,縦型手すりを把持することでそれらのモーメントが減少する.つまり,立ち上がり動作後の立位姿勢にまで安定感を与えた要因としては立ち上がり動作そのものが少ない重心変化量で可能であったこと,関節モーメントの減少が関与していると考えられた.

まとめ

縦型手すりを用いた立ち上がり動作ではその直後の立位姿勢を安定させることが明確となり,トイレ動作や更衣動作などにも活用できることが示唆された.

参考文献・引用

  1. 國井清照他:立ち上がり動作を補助するトイレ用縦手すりの研究日本建築学会計画系論文集2002

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