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2017年度 課題研究発表会
口述演題

有資格者である理学療法士と学生との 関節可動域検査における信頼性に関する検討

キーワード:検者間信頼性触診技術関節可動域測定
作業療法士学科
松本 駿太郎/倉光 大志/坂口 数馬/田中 絵理/村中 政和/森岡 一紗

はじめに

本研究では学生の関節可動域検査における具体的な技術到達レベルを明確にする目的でまず資格を有する理学療法士(以下RPT)の計測値の信頼性について検討した.また,理学療法評価技術を習得した学生の関節可動域検査における計測値の信頼性を求め,RPTと同等の信頼性は保証されるのかについて調べることとした.

対象と方法

対象は当学科に勤務するRPT5名と,本研究に同意が得られた本校最終学年の学生34名とした.方法は被験者として既往歴のない健常男性1名を設定し,研究を通して誤差が出ないように服装は同一にした上でRPT5名,学生34名が同一のプラスチック製ゴニオメーターを使用し,右股関節屈曲,右足関節底屈,右肩関節屈曲の3箇所の角度を測定する.その際ゴニオメーターの数値の部分は測定者に測定値が見えないように目盛部分に紙を張り目隠しを行い確認できない状態とし,測定値は研究者側が確認・記録する方法とした.

上記の方法で得られた結果を1RPT間,2学生間,3RPTと学生間の比較の観点でまとめた.

結果

右肩関節屈曲の結果は,学生で140~180°(平均値162.9±10.7)であり,RPTでは165~170°(平均値168.0±4.4)であった.右股関節屈曲では学生で105~140°(平均値115.9±9.6)となりRPTでは110~115°(平均値113.0±2.7)で5人中4人が115°の判定を下した.足関節では,学生で35~70°(平均値44.8±12.2)であり,RPTでは50~55°(54.0±2.2)で5人中4人が55°の判定を下した.

考察

今回の結果より学生は肩関節屈曲で40°の差,股関節屈曲で35°の差,足関節底屈で35°の差が生じたが,RPTでは全ての検査において5°の差しか生じておらず,またその全てで5人中4人の数値が一致している事から,学生とRPTとでは検査の精度の差が大きくRPTと学生の練度の差が明らかになった.RPTの関節可動域測定の計測が高い信頼性が保証されることから,この水準の計測が最終的に到達しなければならない学生の技術的レベルであると考える.関節可動域の誤差を招く要因として,基本軸と移動軸,更にそれぞれのランドマークを特定する際の触診技術の問題があると考えられる.そのため,学生ではこのような技術がRPTに比べて十分でなかったことが今回の結果を招いたと考察する.したがって,学内ではこのような技術的能力を向上させるための何らかの介入が必要であると考えられた.

まとめ

学生の関節可動域検査における具体的な技術到達レベルは検者間誤差を5°までと設定し技術向上に努めるべきとする.

参考文献・引用

  1. 藤野詩野:学生における股関節関節可動域の検者間信頼性の検討日本理学療法学術大会2013加藤宗規:学生が行う関節可動域の信頼性・再現性および目測の妥当性理学療法学1998

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