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2017年度 課題研究発表会
口述演題

私たちの考える住み良い街づくり -作業療法士の学生によるバリアフリー点検を踏まえて-

キーワード:バリアフリー地域街づく街づくり
作業療法士学科
太田 好男/石谷 桃佳/岸下 美穂子/小林 光世

はじめに

2016年10月,住み良い街づくりのため鳥取市が行っている鳥取駅周辺のバリアフリー点検に,本校の学生が授業の一環で参加し,課題の明確化と発表を行った.今回,作業療法士として住み良い街づくりのために必要な要素を検討した.

方法

鳥取駅周辺のバリアフリー点検に参加した身体障がい者やベビーカー利用者11人(以下,協力者)と本学科学生38人(以下,学生)を対象に,住み良い街について自由記載形式のアンケートを実施した.アンケート結果をすべて抜き出し,KJ法を用いて要素を整理し構成因子を抽出した.

結果

アンケート回収率100%で,学生に104つ,協力者に42つの意見があった.KJ法の結果を意見の多い項目から順に挙げると次のようになった.

協力者からは,横断歩道などの「道路環境」,案内方法などの「公共交通機関の利便性」,優しさなどの「人の心」,法制度機能の「行政」,公共の情報共有の「その他」の5因子が抽出された.

学生からは,道路整備などの「道路環境」,時間・便数などの「公共交通機関の利便性」,優しさなどの「人の心」,バリアフリーなどの「公共施設」,市町村などの「行政」,駅周辺などの「活性化」,買い物の利便性,子どもに関する事項などの「その他」の7因子が抽出された.

協力者と学生の意見において,「道路環境」「公共交通機関の利便性」「人の心」の3因子の意見が共通して多く挙げられ,「行政」「その他」は共通因子となったが内容の異なるものであった.

「公共交通機関の利便性」では,協力者と学生で異なる視点の要素があった.公共交通機関利用者にとって必要な情報について,協力者は知覚に必要となる感覚情報の多様化について意見しており,学生は掲示の位置についての意見であった.

「人の心」では,ほぼ同様の意見が挙がっていたが,学生には支え合いという要素があった.

「公共施設」「活性化」の2因子は協力者の意見からは抽出されなかった.

考察

「道路環境」に最も多くの意見が集まったのは,バリアフリー点検が物理的バリアに着目して実施された可能性があり,日常の移動の中で感じている不便さを協力者も学生も再確認する機会になったのではないかと考えた.

「公共施設」「活性化」が協力者の意見から抽出されなかったのは,協力者は移動手段の安全性が得られていない者だったため,社会生活全体ではなく移動に関連した限定的な意見になった可能性があると考えた.しかし,学生から挙がった「公共施設」「活性化」についての意見は,作業療法士養成教育によって養われた多角的な分析的視点が影響しているとも解釈できる.

作業療法士は,人的・物的環境を分析して改善策を活かす職種であり,問題を抱えた対象者とサービス提供者との仲介役,ハード面とソフト面の調整役として活躍できる職種だと考える.その特色を活かし鳥取市でバリアフリー点検を通じた産学官連携の活動を継続し,より良い街作りのための意見を提案していきたい.

参考文献・引用

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