menu

2017年度 課題研究発表会
口述演題

胃瘻造設している患者の看護 -基本的ニードの考察-

キーワード:ニード
看護学科
日浅 茉那

はじめに

高齢者がおいしいものを食べている時に生きがいを感じている割合は40%を占めており,食べるという生活行為が生きる上で大切なものの上位を占めている.

今回胃瘻造設している高齢者を受け持ち,「コーヒーが飲みたい」思いを実現できるように援助した.結果わずかではあるが,摂取でき満足感が得られた.その過程を人間の基本的ニードの視点で考察したので報告する.

事例紹介

A氏80歳代女性,1年前にアルツハイマー型認知症の診断を受け,加療中.3ヶ月前から突然経口摂取困難となり,胃瘻を造設した.経口摂取ができなくなる頃より日常生活行動も援助を必要とした.

看護の実際

受け持ち当初A氏は胃瘻からの栄養摂取について,「栄養が入っているので,元気にしてくれるもの」と肯定的な発言であった.口腔ケアや日常生活の援助などを日々行なう中で,「患者は寝ているだけでいい」と言う発言も聞かれた.食に対する思いを更に引き出したところ,「コーヒーが飲みたい」と言う表出があった.その後言語聴覚士の支援を得て,とろみつきのコーヒー摂取から開始し,A氏の意見も取り入れながら徐々に好みのコーヒーが誤嚥せずに摂取できるようになった.A氏は「今まで飲んでいた味と同じだ」と満足感を表出した.

考察

ヴァージニア・ヘンダーソンは,人間の基本的欲求は多様な生活様式や個人を取り巻く環境によって変化すると言っている.A氏はコーヒーを飲むことを日課として長年過ごし,単なる嗜好品と言う意味だけではなく,家族や友人たちとの人間関係のつながりもあった.

A氏は食事としての経口摂取は困難となり,栄養は胃瘻からの摂取を受け入れていたと思われていた.しかし,食事は経口で摂取できないものとあきらめの気持ちもあったのではないかと考える.しかし,そのような状況の中でも好きなものを摂取したいと言う意欲は失っていなかった.とろみをつけたコーヒーを誤嚥なく,そして味を楽しんでもらうように少しずつ摂取してもらうことで患者本人からも「こうしてほしい」と言う思いが表出されるようになったことは,患者の満足感につながったと考える.

まとめ

患者の基本的ニードを満たすためには,できないところに注目するのではなく,生活史や患者の思いを理解して援助することで,QOLの向上や生きる意欲ににつながることがわかった.

参考文献・引用

  1. ヴァージニア・ヘンダーソン(湯槇ます,小玉香津子訳):看護の基本となるもの改訂版日本看護協会出版会

ページトップへ戻る

close