股関節内転筋の強化が重心動揺・膝間距離に及ぼす影響
はじめに
整形外科的疾患の上位に位置する変形性膝関節症(以下膝OA)の予備軍でもあるO脚は股関節内転・外転筋群や膝周囲筋群機能不全を呈している傾向にある.予備軍の段階での予防的介入は病態移行を回避できる可能性として有用である.今回,介入効果の検証を主目的として,重心動揺及びO脚の指標となる膝間距離に着目した.
対象と方法
対象は日常生活を支障なく行なっている健常人10名(男性4名,女性6名平均年齢21.1歳)とし,事前に本研究の目的や手順等を十分に説明し同意を得た.
方法は,股関節内転筋の強化運動における前後の重心動揺測定と両膝間距離(大腿内側上顆を結ぶ距離)を計測した.
股関節内転筋の強化運動は,3週間に渡り,立位で膝関節伸展位を意識した状態で大腿内側部に筒状のタオルを挟み,最大等尺性収縮にて15秒を20回行った.
統計解析には,4Stepsエクセル統計ソフトstatcel3を用いて介入前後の重心動揺測定及び膝間距離をウィルコクソン符号付順位和検定にて行なった.(危険率5%)
結果
介入前後における重心動揺と膝間距離において統計学的な有意差は認めなかったが,重心動揺測定におけるX軸総軌跡長の短縮化傾向及び膝間距離の狭小化傾向を認めた.
考察
重心動揺測定でのX軸総軌跡長は,左右の重心動揺を示めしている.短縮化傾向を認めた点では,股関節内転筋の強化が,前額面上の重心制御に効果的な一側面を持っていることが伺えた.
また,股関節内転筋の強化が薄筋の作用を高めた結果,下腿の内旋を引き起こし膝間距離の狭小化傾向に影響したと推測する.
まとめ
統計学的な有意差は認めなかったが,股関節内転筋の強化は,前額面上での制御機能及びO脚傾向に対する介入効果の一助となることが示唆された.
参考文献・引用
- 1)石橋健司ら:ボールつぶし運動はO脚傾向の軽減に有効か--女子学生の膝間距離の変化に着目して.大分大学教育福祉科学部研 究紀要,33(2);189-196,2011-10.
- 2)松崎秀隆ら:内反膝を呈する若年女性の股関節周囲筋力.理学療法学,40(2);482013.