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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

握力と CS-30 における相関性の検討

キーワード:CS-30下肢筋力全身筋量握力
理学療法士学科
渡邊 悠人/伊藤 睦希/井上 恭佑/加藤 彰宏/仲山 朋輝/松岡 隆裕

はじめに

現在,下肢筋力把握のための評価方法として,総合事業所などで多く用いられている30秒間立ち上がりテスト(以下CS-30)がある.しかし,我々の臨床実習施設では実際にCS-30を用いた評価は行われていなかった.その理由として,免荷期間中の患者や疼痛が強い患者に対しては実施が不可能であることや,体幹機能やバランス能力など様々な要素が含まれており,筋力単一要因として捉えることは不適切であることが挙げられる.そこで本研究では下肢筋力との相関があると言われている握力とCS-30を計測することにより簡便かつ低リスク下で下肢筋力を把握するための一要因になると考え検討した.

対象と方法

対象は本校在学中の健常男子学生20名(年齢は20歳~25歳)とし,腰痛がある者,下肢に疼痛がある者,著しい体調不良の者は除外した.計測項目は体重,体脂肪率,握力,CS-30とした.方法は,体重計を用いて体重,体脂肪率を計測した.握力は,高さが調整できるプラットホーム上に股関節・膝関節屈曲90°,足底全面接地の端座位をとり,左右交互に2回ずつ計測した.CS-30については,裸足で握力計測と同様の肢位にて両腕を胸の前で組ませ,開始の合図で体幹部と両膝関節が完全伸展した立位になり素早く座位姿勢に戻る,という動作を30秒間出来るだけ多く繰り返させ回数を計測した.また,体重と体脂肪率を用いた計算式から全身筋量を算出した.すべての計測結果について,相関係数を使用して統計処理を行った.なお対象者には本研究の目的・内容を十分に説明し,紙面上にて同意を得た.

結果

1握力とCS-30の相関係数はr=0.72であり,かなり強い相関が認められた.2握力と全身筋量の相関係数はr=0.55であり,強い相関があると認められた.3CS-30と全身筋量の相関係数はr=0.04であり,相関は認められなかった.

考察

先行研究によると握力とCS-30はそれぞれ下肢筋力との間に相関があるとされていたが握力とCS-30との間の相関については明確とされていなかった.本研究の結果から握力とCS-30との間に強い相関,握力と全身筋量との間には相関が認められた.このことから全身筋量が多い対象者ほど握力が強いという傾向があり,それに伴いCS-30の結果も高値なものになると考えられた.しかし全身筋量とCS-30との間には相関は認められず,その理由としてCS-30は下肢筋力とは相関があるが今回は全身筋量を見ているものであるため下肢筋力に限定したCS-30との間には相関が認められなかったと考える.握力とCS-30との相関については強いものであったため握力を計測することは下肢筋力を把握するための一要因になると考える.

今後の課題として,標本数を増やしたうえでカットオフ値の設定について検討したいと考える.

まとめ

握力とCS-30との間に強い相関が認められたため当初の目的としていた握力を計測することによる下肢筋力を把握するための一要因については期待することが出来る結果となった.

参考文献・引用

  1. 1)田中真一ら:地域在住高齢者の下肢筋力がバランスおよび動作能力へ及ぼす影響-足関節底屈筋力および大腿四頭筋力との関連-.ヘスプロモーション理学療法研究,3(4);163-167,2014.

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