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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

シャウト効果が筋出力に及ぼす影響 ~「え」の発声時と咬合時の握力の比較~

キーワード:シャウト効果咬合握力筋出力
理学療法士学科
植田 空/小屋本 遥輝/下多 脩斗/中村 圭登/松浦 晋之介/宮川 裕太郎

はじめに

我々は日常生活上,筋力を発揮する際に無意識に歯を噛み締めることがある.先行研究では咬合位の方が開口位よりも筋出力が増加した1)と報告されている.一方スポーツなどではパフォーマンスの際に強く発声する場面をしばしば目にする.発声によりシャウト効果が得られるが,酒井ら2)は母音の「え」の発声は無発声時や他の母音に比べ筋出力が増加したと報告している.本研究では咬合時と「え」の発声における最大筋出力について握力測定を用いて比較することで,最も効率的な筋力発揮方法を検討した.

対象と方法

本校に在籍する健常男性20名,健常女性13名の計33名.(n=33)

握力の測定は自然立位姿勢とし,被検者に握力計を(A)咬合下,(B)「え」の発声下の2方法で最大筋力にて3秒間把持させた.なお(A)(B)は筋疲労を考慮し別日に測定した.測定にはスメドレー式デジタル握力計を用いた.

結果

1回目の測定は練習とし,2,3回目の結果を測定値として(A)(B)の結果を以下の表に示す.

A(咬合)の握力平均(n=33)で2回目は34.9kg,3回目は34.5kgを記録した.B(発声)の2回目は35.8kg,3回目は36.5kgを記録した.2回目の咬合時と発声時の握力においてt検定を用いて比較したところ,P値は0.06>0.05となり,2群間に有意な差は認められなかった(p‹0.05).3回目の結果はP値0.0008<0.05となり,2群間に有意な差が認められた(p‹0.01).

考察

本研究の結果,3回目の測定で有意な差が得られたことから,咬合時より「え」発生時の方が全身の筋出力向上に影響を及ぼすことが分かった.先行研究で「い」,「う」,「え」の発声が精神的緊張を高まらせ,緊張と筋出力が合致することで運動に対し有効に働くとされている2).柳川ら3)は「かけ声によって大脳内に生じた旧皮質の賦活作用が,間接的に大脳皮質,興奮性を高め,大脳に生じた内制止を制止すること,つまり脱制止することで心理的限界から一時的に生理的限界へと高められるとしている」.また,千木良ら4)は,「体幹の固定性が掛け声による腹圧上昇で高まるため四肢の筋力が発揮しやすくなる」と述べている.「え」の発声で精神的緊張と全身の筋出力が得られたこと,大脳皮質の興奮性が高まったこと,腹腔内圧上昇で体幹の固定性が高まったことで筋出力が向上したと考える.

まとめ

本研究では咬合時握力と『え』の発声時握力の有意差はあったため,考察で述べた腹腔内圧上昇により体幹の固定性が高まったこと,また発声の大きさについて着目し再検討していく.

参考文献・引用

  1. 1)諸上大資ら:咬合が筋出力に及ぼす影響.九州理学療法士・作業療法士合同学会誌, 30,2005.
  2. 2)酒井章吾ら:母音の種類によるシャウト効果の検証.理学療法学,43(2);2015.
  3. 3)柳川和優ら:ストレッチング,噛みしめ,シャウトが膝伸展筋力に及ぼす影響.広島経済大学研究論集,39(1・2);75-80,2016.
  4. 4)千木良佑介:若年者と高齢者の最大筋力発揮時におけるシャウト効果の検証,第3回日本トレーニング指導学会大会,2014.

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