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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

筋緊張時痛のある脳梗塞患者の看護 ~疼痛緩和に焦点をあてた援助~

キーワード:リハビリテーション意欲疼痛緩和食事動作
看護学科
竹森 光希

はじめに

疼痛とは,実際に何らかの組織損傷が起こった時,あるいは組織損傷が起こりそうなとき,あるいはそのような損傷の際に表現されるような,不快な感覚体験および情動体験を指す.今回,慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)増悪による加療中に,脳梗塞を発症した70代の男性患者を受け持った.身体的疼痛から食事動作とリハビリテーション実施に支障をきたしていたが,疼痛緩和により改善が見られたので報告する.

対象と方法

対象:A氏.70歳代男性.
診断名:COPD急性増悪.
経過:入院中に脳梗塞を発症.日常生活動作全介助.左片麻痺,左半側空間無視,右共同偏視あり.方法:実習記録から場面を振り返り,文献を使って考察する.

結果

A氏は,左半身,特に頸部後面の筋緊張による疼痛を訴えていた.疼痛は,臥床時と動作時に生じており,特に食事動作に支障が見られた.食事は,昼食時のみリクライニング車椅子に移乗し,デイルームで摂取していた.食事を開始して5分程で身体の疼痛を訴え,徐々に体幹が右に傾き,食事動作が中断した.リハビリテーションは,毎日理学療法,作業療法,言語聴覚療法を各20分実施していたが,疼痛のため否定的な発言や拒否がみられた.また,A氏とかかわる中で,疼痛に対する発言が多く聞かれた.訪室の際,こまめに疼痛の有無を確認し,「痛いなぁ」と発言があった際は,A氏が持参していた塗り薬を塗布し,軽く擦った.また,頸部後面への温罨法を昼食の離床時刻に合わせて20分間実施した.A氏も「えぇあんばいだ」と,心地よさそうな様子であった.その後,15分であったが離床後の疼痛を生じず中断することなく食事を摂取することができた.また,リハビリテーションについても同様の方法で疼痛緩和をはかった結果,否定的な発言・行動なく実施できるようになった.

考察

登喜らは,「痛みやしびれは,日常生活の動作性・迅速性・巧緻性に影響を及ぼし,さらに性生活や食事,会話を楽しむなどの快適さや将来の見通しに影響を及ぼしていた」1)と述べている.A氏の最も強い訴えである疼痛を緩和する援助を行ったことで,食事動作の向上に繋がったと考える.また,吉岡らは「高齢者が持つ価値に目を向け,それを自分の価値と同じように大切にすることが,高齢者への‘最善’の看護を探る上で欠かせない」2)と述べている.痛みを訴えた際は,速やかに除痛を行う.不安な思いを傾聴するなど気持ちに寄り添う援助を行うことで心理的な不安が除去され,さらにリハビリテーション意欲の向上に繋がったと考える.

まとめ

対象とのかかわりの中で,最も強い苦痛の訴えに焦点を当て,気持ちに寄り添いながら援助を行
うことで,食事動作の改善とリハビリテーション意欲の向上につながった.

参考文献・引用

  1. 1)登喜和江:脳血管障害後遺症としての痛みやしびれの日常生活への影響と対処法.神戸市看護大学紀要,11;27-36.2007.
  2. 2)岡本充子:エンド・オブ・ライフを見据えた“高齢者看護のキホン100”.第1版,株式会社日本看護協会出版会,61,33‐38,2015.

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