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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

適応障害・知的障害を持つ成人女性への退院支援 ~感情コントロール・生活リズムの乱れに対する援助~

キーワード:傾聴知的障害退院支援適応障害
看護学科
住山 愛

はじめに

退院支援の目標は「退院そのもの」ではなく「地域生活へのスムーズな移行とその後の地域生活の安定」1)である.今回,適応障害・知的障害のある成人期の女性患者を受け持った.本人は退院希望しているが,感情のコントロールが不十分で退院の見通しが立っていなかった.思いを尊重したコミュニケーションや食事制限についての指導などの退院支援を行ったことで気持ちが安定し退院日を決定することができたので本事例での関わりについて振り返る.

対象と方法

対象:A氏40歳代女性
診断名:適応障害知的障害糖尿病
経過:夫と二人暮らし子どもは施設で暮らしている.食事はカロリー制限の指示があるが夫との面会時に制限を守れないことがあった.不安があると物に当たって大声を出して,入浴や着替えに対しても拒否する発言も見られた.方法:実習記録から場面を振り返り,文献を使って考察する.

結果

A氏と信頼関係を築くためのコミュニケーションとして不安の表出には隣に座りタッチングをしながら沈黙の時間を作った.辛い時も傍にいるという姿勢で訴えを傾聴し思いに寄り添うと大きな不穏に繋がることなく過ごすことができた.

糖尿病による食事のカロリー制限への指導,感情コントロールに対して行動療法としてA氏の退院に向けての目標や約束を共に考えた.それを記載したポスターと,自宅でも活用できる食事療法についてのパンフレットを作成した.退院までのカレンダーの欄も設け,目標の達成や約束を守ることでシールを貼れるようにした.知的障害があることを考慮し,文字でなく絵を多く取り入れた内容とした.できたことを認め頑張りに対しては称賛の言葉がけを行ったことで,感情が安定し前向きな発言が増えた.拒否的言動も減少したことで清潔行為などの生活リズムも整い,現実的な退院への意欲向上へとつなげることができ,退院日が決定した.

考察

精神分析的精神療法の原則として「患者の問題点が何であるかを明確にするために耳を傾け,治療目標という観点から重要性に従って患者にそれらの問題を整理させる」2)とある.A氏の性格や特徴を知り訴えを受容し傾聴することで,落ち着いて思いを表出でき,大きな不穏を起こすことがなかったと考える.また,A氏の疾患に合わせた退院支援として絵やシールを活用したポスターやパンフレットを用いて退院までの目標が分かりやすいように明確化した.これはA氏の退院に向けての自己の問題点の整理として効果があったと考える.問題の整理は,現実的な退院後の生活に向けての意欲向上につながり生活リズムの改善が行え,退院日の決定が可能になったと考える.

まとめ

A氏の訴えを受容し傾聴の態度を示したことや性格や疾患を考慮したポスターやパンフレットは生活リズムの安定と共に退院支援へと繋がった.

参考文献・引用

  1. 1)井上新平ら:精神科退院支援ハンドブック. 医学書院,東京,2-6,2011.
  2. 2)レスター・ルボルスキー著竹友安彦監訳:精神分析的精神療法の原則支持表出法マニュアル.岩崎学術出版社,東京,53- 56,1990.

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