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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

長期臥床の高齢者に行った食前の手浴が与えた効果についての考察

キーワード:手浴認知症長期臥床高齢者
看護学科
岩田 七海

はじめに

入院加療が高齢者に与える影響として,低活動状態が続くことによる全身の筋肉量の低下や認知機能低下が生じ,結果として入院時よりも身体機能が低下した状態が生じることが上げられる1).今回,脳梗塞後遺症による左不全麻痺で食事動作が困難な長期臥床中の高齢患者を受け持った.温熱刺激による手指の運動機能の改善を目指して食前の手浴を実施すると食事摂取動作に改善が見られ,摂取量も増加した.その効果について考察する.

対象と方法

対象:A氏,女性,80歳代,要介護4
診断名:糖尿病,慢性心不全,脳梗塞,アルツハイマー型認知症
経過:見当識障害,失行あり.脳梗塞後遺症による左不全麻痺あり.自力体動困難で臥床生活.食事はセッティング・声かけ・見守りを行い,右手のみ使用して自力摂取可能.方法:実習記録から場面を振り返り,文献を使って考察する.

結果

食事はデイルームでリクライニング車椅子を使用した.姿勢と環境を整え,エプロンを装着し,見守りと声かけを行った.食事中左手を使うように促し食器を渡しても「いい」と言われ使われない.手指冷感があり,昼食前に両手の手浴を実施すると冷感の改善がみられる.その後,いつものように右手だけで食事をされていたので,「左手で食器を持ってみませんか?」と食器を渡すと,そのまま左手で食器を持って食べ始めた.そして,食器を置いてからも自ら左手で食器を持ち,お茶
を飲む時も,右手でコップを持ち左手を添えていた.以後も両手を使用したスムーズな食事摂取が
みられ,摂取量も増加していった.

考察

A氏が食事中左手を使用しなかった原因として,アルツハイマー型認知症による失行,脳梗塞の後遺症(右手に比べ左手の手の動きが悪い),長期臥床と手指冷感による運動機能の低下および習慣性があると考えた.手浴の目的として有田は「長期臥床している患者では,食事の前後や排泄後に手浴をすることが,日常生活のリズムを取り戻すよい機会にもなる,温熱刺激による手指の運動機能の改善,局所循環の亢進によるリラックス効果がある」2)と述べている.A氏にとって,食前の手浴は,温熱刺激による手指の運動機能の改善目的があったといえる.また,左手の運動機能改善により両手を使用したスムーズな食事摂取動作の獲得につながり,それに伴い食事摂取量も増加したと考える.

まとめ

食事中左手を使わない高齢者に実施した食前の手浴は,左手の運動機能の改善と両手の使用によるスムーズな食事摂取動作への効果を与えたと考えられた.

参考文献・引用

  1. 1)金盛琢也:退院後の生活を見据えた高齢者 ケア.看護技術,63(12);NO.12;1120-1272,2017.
  2. 2)有田清子:基礎看護技術II.第17版,医学 書院,東京,179,2017.

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