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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

心理的危機状態にある患者への看護 ~2度のストーマ造設術後の退院への関わりを通して~

キーワード:コーン障害受容モデルストーマ危機状態
看護学科
岡田 華奈

はじめに

キャプランは危機状態について「人が大切な目標に向かう時に障害に直面し,それが習慣的な問題解決の方法を用いても克服できない時に生じる」1)と定義している.今回,2度のストーマ造設術を受けて心理的危機状態にある患者を受け持った.当初,コーンの障害受容モデルでは防衛期から悲嘆期へ戻りネガティブな発言がみられたが,関わりを通して前向きな言動がみられるようになったので行った看護について考察した結果を報告する.

対象と方法

対象:A氏 70才 代男性
診断名:直腸癌 膀胱直腸瘻
経過:直腸癌で一時的ストーマを造設し閉鎖後,膀胱直腸瘻の状態となり再度横行結腸ストーマ造設目的にて入院しストーマ造設術施行.方法:実習記録から場面を振り返り,文献を使って考察する.

結果

A氏は2度目のストーマ造設術直後は前向きな発言がみられた.しかし,ストーマが大きく装具決定が困難となり,退院の目途が立たないことで徐々にネガティブな発言がみられるようになった.そこで気分転換を目的に散歩を行ったり,頻回に訪室しコミュニケーションを図ることでA氏の想いを否定せず傾聴した.会話の中で,一時的ストーマ使用時は湯船に浸からず,腹部にラップを巻いて濡らさないように入浴していたことや,ストーマからのガスや臭いが気になるという情報を得た.それに対して入浴方法の注意点,食事の嗜好を確認しながら臭いやガスに関係する食材,具体的なレシピなどについてのパンフレットを作成しストーマの生活指導を行った.A氏は説明に笑顔で「家に帰ったらやってみる」と前向きな発言がみられた.また,指導後には,シャワー浴時にA氏自らストーマをしっかり確認し,洗浄される姿がみられるようになり,コーンの障害受容のモデルにある防衛期へと移行していく様子がみられた.実習後半には学生に対して感謝の言動もみられた.

考察

藤野は「介護者は対象者のどんな言動や態度でもいったんそれを受け入れることに徹することが大切である.すると,相互に何らかの信頼関係が生まれる」2)と述べている.悲嘆期のネガティブな発言を否定せず,散歩や頻回の訪室を通して生活習慣や困りごとなどを傾聴したことはA氏を受け入れる姿勢であり信頼関係の構築に繋がったと言える.また,この関わりは危機に対する感情表出やストーマへの不安や問題を明確にする機会にもなり個別性のあるパンフレット作成にも繋がった.パンフレットによる指導はいつでも確認ができ退院後の生活を想起させ,危機状態を脱するために今後の方向性を見出す効果もあったと考える.

まとめ

A氏の言動を受け入れ,危機状態の段階を見極めながら適切な介入を行ったことで感情表出や問題の明確化に繋がった.個別性のあるパンフレットを用いた指導は今後の方向性を見出す上で危機状態への看護として効果的であった.

参考文献・引用

  1. 1)CaplanG:地域精神衛生の理論と実際.東京医学書院,東京,23-65,1977.
  2. 2)藤野信行:障害者心理学.健帛社,東京131-138,2006.

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