鳥取市におけることばの発達支援の現状 ~小児領域の地域連携について考える~
はじめに
小児の発達支援は,医療,保健分野など様々な機関・職種の連携が必要である.しかし,当校「ことばの相談室」に来校している児の保護者から相談に至る経緯について「ことばの発達に不安を感じていたが,どこに相談してよいかわからなかった」という声があり,ことばの相談支援の現状に疑問をもった.そこで,鳥取市内において小児の相談支援を行っている機関へのインタビューを行い,ことばの発達支援の現状と言語聴覚士(以下,ST)との連携の現状を調べた.また同時に鳥取市内の病院・施設に在籍するSTへのアンケートを行い,小児領域における地域連携について調査した.
対象と方法
1)対象:鳥取市内のSTの在籍しない小児の相談支援機関(保健,福祉,教育各領域)5箇所.実施期間:H31.2.4~2.14.方法:インタビュー調査:1ことばの相談の現状2STとの連携について2)対象:鳥取市内のST在籍機関10カ所.実施期間:H31.2.22~3.15.方法:アンケート調査:1小児訓練の実施の有無と対象2他機関との連携について3自由記述.1)および2)を実施後,文献を含め考察を行う.
結果
1)1ことばの相談の現状については「言語に関した専門的な対応ができていない」「STに相談したい事が多くある」「STに研修などを開いてほしい」などが聴取された.2STとの連携についてはすべての機関で「領域を越えて連携したい」「一緒に発達支援をしてほしい」という要望があった.一方「小児領域のSTがどこにいるかわからない」という意見もあった.2)アンケート回収率は100%であった.1小児訓練を実施している機関は10施設中5施設,小児領域のみを専門とするSTは3名であった.2連携対象は,対象児が通う園・学校が75%,行政は25%であった.3自由記述では「相談はあるが体制上の理由で対応できていない」などがあった.
考察
厚生労働省の報告「今後の障害児支援の在り方」(2016)では「地域における縦横連携の推進」として「保健,医療,福祉,保育,教育,就労支援とも連携した地域支援体制の確立」を掲げている.今回インタビューした各相談支援機関では,すべての機関においてSTへのニーズ,連携に対する希望があった.しかし小児領域のSTの在籍機関がわからないという声もあり,連携はまだ不十分な状況であると考えた.
背景としてはST数の少なさも影響していると考えられたが,どこに相談すればよい,という基本的な情報も少ないのではないかと推察した.そこで今回試案として,関連機関や保護者がことばの相談のできる機関がどこにあるか一目でわかる「ことばの相談支援マップ」を作成した.菅野(2000)は,STの役割として「障害をもつ幼児を受け止め,専門的な技術の提供を行い,保護者へは混乱した気持ちを受け止め,納得のいく情報を提供する援助を行うことである」と述べている.必要な情報をわかりやすく提供し,共有することも今後の地域連携の促進へ繋がると考える.
まとめ
今後,広く鳥取県全域のことばの発達支援体制について調査したいと考える.
参考文献・引用
- 1)鬼塚祥子:学校とのかかわり特別支援教育における言語聴覚士の役割と課題.地域リハビリテーション,10(4);251-256,2015.