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2019年度 課題研究発表会
ポスター演題

粗大な上肢運動が若年健常者のバランス能力に与える影響

キーワード:バランス能力上肢運動若年健常者
作業療法士学科
青木 潤一郎/岩本 唯里/牧田 悠佑/山下 美奈/清水 将司

はじめに

バランス能力向上を目的とした体幹・下肢への介入は広く認知されているが,作業療法では上肢に介入することが多い.そこで,上肢運動によりバランス能力の向上が期待できるのか,若年健常者への影響や評価方法の検討を実験的に行った.

対象

本研究に同意が得られた本学科学生の健常者10名(男性7名,女性3名)とし,年齢22.4±5.8歳(平均値±標準偏差)であった.

方法

バランス能力評価指標にはFunctionalReachTest(以下FRT),修正閉眼片脚立位検査(修正closedeyeonefootstanding:以下修正COFS),修正姿勢安定度評価指標(modifiedindexofposturalstability:以下MIPS)を用いた.修正COFSは,上肢運動によるバランス制御を許容させるため腰に手を当てずフリーとし,耐久性評価の要素が入らないよう60秒を上限とした.MIPSは,軟面マットBALANCEPAD(EMSO製)と重心動揺計(株式会社ユニメック製,平衡機能計UM-BARII)を用い,平均重心動揺面積と安定性限界面積を測定し,log(1+[安定性限界面積]/[平均重心動揺面積])にて算出した.

粗大な上肢運動は,頭部・体幹・下肢の動きを最小限に抑えるため背臥位とし,両肩関節90°屈曲位にて両手で反対側の肘を掴ませた状態から両手を左右へ可動域いっぱいに反復させる両側動作とした.運動のタイミングは60BPMのメトロノームのリズムで2秒ごとに1往復させ,1分間繰り返しさせるものとした.

FRT・修正COFS・MIPSに必要な測定を①事前,②上肢運動無し後,③上肢運動後にて十分な休憩を挟んで測定し,①-②間と②-③間の差をt検定で比較し,各評価指標の結果について考察した.統計解析にはMicrosoftExcel2010を用いた.

結果

図1・2のとおり,いずれの評価指標でも,①-②間・②-③間で有意差は認めなかった.

考察

FRTは上肢運動時のバランス能力を測るパフォーマンス評価であるため,介入に伴いバランスが改善されると予測していたが,介入の有無による差は認められなかった.測定の度にわずかに平均値が増加していたが,学習効果のためと考えた.

修正COFSでは上限60秒としたため天井効果があった.健常者を対象とした指標としては不適切であったと考えた.

MIPSは,重心の揺らぎに対してどの程度余裕があるかを示す指標で,数値が大きいほど安定しているとされ,COFSで天井効果を示すバランス良好な対象でも安定性の差を比較する指標になるとされている.今回,実験的にデータ測定を行ったため,データの信頼性が十分とは言えない.

バランス能力とは姿勢制御であり,システム理論で構成要素(筋骨格系)や共同筋活動(神経筋)を含む概念的モデルとして示されている.上肢運動はこれらの要素への働きかけとなるため,何らかの評価指標で変化を確認できると考えたが,今回の実験ではそれを示すことができなかった.本実験を予備的調査とし,用いた評価指標だけでなく他の評価指標も熟知し,対象やデータ比較方法も再検討して研究を深めていきたい.

参考文献・引用

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