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2019年度 課題研究発表会
口述演題

胸郭可動域トレーニングにおけるホットパックの有効性の検討

キーワード:ホットパック肺活量胸郭可動域トレーニング胸郭拡張差
理学療法士学科
太田 満咲/岸本 真央/澤口 初月/田中 千比呂/浜田 真緒/和多瀬 俊/日下 将

はじめに

胸郭可動域トレーニングは,胸郭拡張差や肺活量,呼吸困難の改善など呼吸機能の維持及び改善を図る手段として有効であり,呼吸器疾患のみならず多くの患者に適応となる.しかし,徒手的な手技は技術が必要とされ臨床経験の浅い治療者では一定の効果を与えることは難しい.一方でホットパック等の物理療法は臨床経験による効果が比較的生じ難い.今回,軟部組織の伸張などに効果があるホットパックにおける胸郭可動域トレーニングの有効性について検討を行った.

対象と方法

本校に在籍する呼吸機能に疾患を有していない生徒の中で,18歳から24歳までの男性10名女性10名を無作為に選出し対象とした.スパイロメーターを用いて,ホットパック施行前の肺活量を計測し,メジャーを用いて最大呼気時及び最大吸気時の胸囲を計測した.肺活量の計測については,測定方法の不慣れによる検査結果の誤差を防ぐため,前日にスパイロメーターの練習を行った.背臥位で,乾熱法によるホットパックを胸郭部に当て,20分施行後に再度肺活量と胸囲を測定しホットパック施行前と,施行後の差を比較することで,ホットパックを使用した温熱療法が胸囲及び肺活量に与える影響について考察する.

結果

ホットパックによる温熱療法施行前の肺活量の平均値は3.54L,ホットパック施行後の肺活量
平均値は3.66Lであり,肺活量が増加した(p=0.005,p<0.05).
また,ホットパックによる温熱療法施行前の胸郭差は2.93cm,ホットパック施行後の胸郭差は3.70cmであり,胸郭拡張差も増加した(p=0.0001,p<0.05).

以上の結果からT検定を実施したところ,P値が有意水準の5%未満であり,いずれにおいても有意差が認められた.

考察

ホットパック等の温熱療法は,組織の温度を上昇させ組織の粘弾性を低下させることで軟部組織の伸張性を増大させる効果がある.また古後らは,ホットパックが筋硬度を低下させる手段として有効である1)と指摘している.

本研究における胸郭拡張差の結果から,胸郭部にホットパックを20分間施行することで肋間筋の硬度が低下し伸張性が増大することで胸郭可動性が増大し,胸郭の拡大が起きたと考えられる.肺活量の結果についても,胸郭可動域が増大したことで予備吸気量及び予備呼気量が増加し肺活量が増加したと考えられる.

まとめ

本研究において,ホットパックを20分間施行す ることで胸郭可動域及び肺活量が有意に向上した ことから,胸郭可動域トレーニングにおけるホッ トパックの有効性が示唆された.実際に臨床現場 でセラピストがホットパックを使用することで, 徒手での胸郭可動域トレーニングと同等の効果を 得られることが期待できる.

参考文献・引用

  1. 1)古後晴基ら:ホットパックの乾熱法と湿熱法の違いが筋硬度に及ぼす効果.理学療法科学,25(4);631-634,2010.

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