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2019年度 課題研究発表会
口述演題

心不全で再入院した高齢者の意欲を引き出す看護 ~筋力訓練、服薬自己管理を通した行動変容への関わり~

キーワード:心不全意欲高齢者
看護学科
濱田 裕佳

はじめに

心不全患者は症状の急性増悪による再入院を繰り返しながら,徐々に治療抵抗性の末期心不全期に向かっていくことから発症の予防が重大な課題である1).今回,心不全の急性増悪で再入院した高齢患者を受け持った.心不全の再発予防を目的に退院に向けて下肢筋力訓練,服薬自己管理を実施し,患者の意欲を引き出すことができ行動変容に繋がったのでその結果を報告する.

対象と方法

対象:A氏80歳代男性
診断名:慢性心不全急性増悪
経過:慢性心不全の既往があったが,服薬管理不足のため症状悪化し入院.自宅では日常生活動作・歩行も自立.入院後は心不全症状により筋力低下あり.入院中の服薬管理は病院で行っていた.方法:実習記録から場面を振り返り,文献を使って考察する.

結果

A氏は心不全の急性増悪による心機能の低下,加齢・認知症に伴う活動意欲低下などから臥床傾向であった.筋力低下による歩行時のふらつきがあったため,下肢筋力強化のためのパンフレットを作成し病室で訓練を実施した.最初は消極的であったが必要性を説明することで「次はこれをやってみようか」「時間がある時にやってみる」など前向きな発言が聞かれた.受け持ち時は車椅子移動であったが受け持ち6日目には歩行ができ,排泄動作などの日常生活動作も拡大した.また,服薬管理不足で急性増悪となったことから服薬ケースを作成して薬剤の確認,取り出しから内服までの練習を行った.「薬の管理ができるようにしないといけない」「繰り返しやってみる」など自己管理への意欲がみられた.A氏からの質問には丁寧に説明を行い,1錠ずつ確認しながらの服用など状況に合わせて管理方法の修正も行った.家族も含めて説明することで退院後に家族が支援すべき内容も明確となり退院へ向けた支援に繋がった.

考察

三浦は「行動変容に向けた意欲を引き出すには期待と自信を高める働きかけが重要である」1)と述べている.パンフレットを用いた筋力訓練は高齢のA氏にも視覚的理解が容易であった.指導時に前向きな発言からも,動ける自分へのイメージを想起させ期待を高めたと考える.また,服薬ケースを使った自己管理を入院中から実際に体験したことはA氏の自信につながったと考える.心不全増悪により活動意欲が低下していたA氏だったが,自分自身への期待や自信を高めたことで活動意欲が向上し,継続した訓練や服薬自己管理へと行動変容した.また,家族も含めて服薬管理方法を説明したことで,A氏は家族のいる安心感と共に,家族から自分への期待も感じたと考える.家族を交えた指導体験も意欲的な服薬自己管理という行動変容に繋げることができた一要因と考える.

まとめ

A氏への下肢筋力訓練と家族を含めた服薬自己管理は,自分への期待や自己管理できる自信を高めたことで意欲に繋がり,退院へ向けた行動変容をもたらした.

参考文献・引用

  1. 1)三浦稚郁子:心不全患者のセルフケア支援.中山書店,東京,2,2014.
  2. 2)佐藤直樹:心不全まるわかりBOOKハートナーシング.メディカ出版,東京,2016.

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