客観的指標を用いた医療面接技術向上の検証
はじめに
医療系養成校では,実務実習を開始する前に技能及び態度が一定の基準に到達しているかを客観的に評価するためObjectiveStructuredClinicalExamination(OSCE)を導入しているところが一般的である.
山口ら1)によると,OSCEの医療面接の評価と臨床実習の成績に相関関係(r=0.75)がみられると述べている.学生はOSCEに向けて医療面接の練習を行っているが,具体的な練習方法がイメージしにくい.本研究は,本学科卒業生に予備調査を行い,OSCEの取組みに関する項目と練習時間の関係を検討した.その後,客観的指標を作成し,指標に基づく練習で,医療面接技術が向上するか検証した.
対象
予備調査の対象は言語聴覚士学科卒業生20名とした.OSCE練習は当学科在学生4名が実施した.
方法
a.予備調査は,対象にアンケートを配布し,練習時間数と5段階の自己評価(達成感,緊張感,気配り・配慮,他者からの評価)を分析した.
b.分析結果から医療面接に関する客観的指標2)および動画の作成し,練習の難易度に段階を設け,見本動画も作成した.
c.客観的指標と動画を基にOSCE練習を行い,客観的指標の修正を実施した.
結果
予備調査の結果,練習時間と緊張感,練習時間と達成感の相関関係はともにr=0.87であった.しかし,練習時間と気配り・配慮の相関関係や他者からの評価との相関関係はそれぞれr=0.37,r=0.38でOSCEは練習時間に加え,練習内容も重要なことが分かった.また,医療面接の練習方法の進め方が分からなかったと意見があった.
これらを基にOSCE実施者が互いに練習・評価を行った結果,客観的指標に項目が設定されることで着眼点が明確になり,自己の改善する点が分かりやすくなったと述べた.しかし「良い・普通・悪い」の3段階評価が難しいことや,質的評価が多い等の意見が得られた.
考察
OSCE練習時に客観的指標を導入することにより,練習相手の評価が容易となり,自己の問題点も明確化しやすくなり,短期間で医療面接の技術の向上を図ることができると考えられた.今後は,実施項目の評価方法や,抽象的な評価項目は判断が難しく,初めて見た人でも分かりやすい表現への改良が必要と考えられた.また,検証例が少なかったことや客観的指標の内容が初歩的なレベルにとどまったため,再度検討を行いより臨床を見据えた項目の作成を目指したい.
参考文献・引用
- 1)山口信ら:臨床能力重視型教育への模索.全国リハ教育研究,24;140-141,2018.
- 2)木戸幸聖:臨床におけるコミュニケーション.創元社,大阪,33-78,1983.