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2020年度 課題研究発表会
ポスター演題

ボトルオープナーの機能性とデザイン性向上について

キーワード:ボトルオープナー地域包括ケアシステム自助具
作業療法士学科
沖田 流星/田中 陸

はじめに

筋力低下がみられる高齢者や障がい者,更に子供でも扱いやすく,低価格で自助具を作成したいと考えた.そこで身近にあるペットボトルを空けるためのオープナーの作成した.自助具の使用でスムーズにペットボトルのキャップを開けることができ,QOLや巧緻性の向上に繋がると考えた.

対象

入所施設の80歳代男性2名,女性3名及び,作業療法士学科20歳代男性,女性各1名,10代男性,女性各8名とした.

方法

実験は2度行い,1度目は高齢者,2度目は本校の学生を対象とした.1度目の実験を行うにあたり,①グリップ型でキャップにはめ込み使用するもの②キャップにはめ込んで手掌で握り使用するもの③キャップにはめ込み,突起部を手掌面で押して使用するもの,それぞれ使用方法が異なる3種類のオープナーを作成した.その際,どのオープナーが使用しやすいのかというアンケートの他に改良点などの指摘を頂き,それぞれのオープナーの改善を行った.当初は校外でもアンケートを行い,幅広いデータによる研究・改良を進める予定であった.しかし,新型コロナウイル感染拡大の為,再実験は本校の生徒を対象とし,改良前と改良後の計6種類を用いて行った.再実験では握力の違いでオープナーの使用感に違いが出るのではないかと考え,本学学生には,実験前に握力測定を実施しオープナーを使用してもらった.

結果

本学学生握力の平均値は男性:右41.7kg左39.5kg女性:右26.6kg左23.1kgであった.

調査結果では,改良後のはめ込み式のグリップ型が最も使用しやすい結果になった.柄の付け根にカーブを付け,手指の形状にフィットするものが最も使用しやすかった.しかし,健常者の握力では自助具を使用しない方が効率の良い結果になった.また,健常青年期の握力の差異では,それぞれのオープナーに大きな使用感の違いは感じられない結果になった.

考察

高齢者の機能性についてグリップ型は,梃子の原理が働き,最も握力を掛けずにペットボトルのふたを開けることが可能だったのではないかと考えた.また,グリップの握り幅の改良を行ったことで,把持しやすく,かけられる握力が向上し,使用が容易になったと考えられる.しかし,素材の性質として摩耗しやすく,摩耗してしまうと機能を果たさなくなる可能性があり改良の余地が考えられる.また,今回,コスト面については,装具採型や自助具の作成で余っている熱可塑性樹脂の素材を使用した為,安価に作成できたといえる.デザイン性においては,作成に利用できた熱可塑性樹脂が黒色で,いびつさも残ってしまった.今後は素材を工夫し,デザイン性を検討する必要があると考えられる.

まとめ

今回は,幼少期の年齢層に試行することができなかった.しかし,機能性に関して,握力低下がみられる高齢者にも使用しやすい結果が出た.今回の経験から,使用者が必要とする機能性を重視したものが必要であると考えた.機能に合わせるには複数回にわたり加工の工夫が必要であったが不十分であった.今後,地域包括ケアシステムがさらに重要視されていくなかでその人らしく生きていくことを支援できる自助具を検討したい.

参考文献・引用

  1. 倉田典和:リウマチ患者と自助具.生活便利帳.4751(325);4-10.2016

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