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2020年度 課題研究発表会
ポスター演題

内側広筋の廃用筋萎縮を防止する運動量の検証

キーワード:patella settingSLR内側広筋廃用筋委縮
理学療法士学科
草刈 彩花/宮本 拓実/向山 斗和/山本 佳汰

はじめに

膝関節術後のベッド上安静や長期臥床により,内側広筋(以下,VM)の筋委縮が著しいことは明らかにされている.市橋ら1)による選考研究では健常者の日常生活と同程度の筋活動(歩行約1万歩)とSLR1200回やpatellasetting(以下PS)400回が同程度の筋活動量であるとし,急性期におけるベッドサイドでの筋力トレーニングとしてSLRやPSが有用であると述べている.しかし,この先行研究では数回の運動によって得られた筋活動から筋活動量を算出したものであり,実際の運動前後で計測したものではない.そこで市橋らが推奨する運動を行い,運動前後のVMの筋疲労度を比較することで先行研究の妥当性を検討する.

対象と方法

健常女性8名,男性11名の計19名(平均年齢26歳)を対象とした.表面筋電図とbiodexを使用し,運動前後でVMの筋活動量を測定した.運動課題は以下の通りである.

①歩行1万歩
平地自然歩行を実施.
②SLR
膝関節45度屈曲5秒間保持,3秒間休息を1000回繰り返す.
③PS
5秒間筋収縮を行い,1秒間休息を400回繰り返す.

各運動前後の筋電図を平均パワー周波数(以下 MPF)へ変換し,筋疲労度を算出した.統計解析 は一元配置分散分析を用い多重比較として Tukey 検定を行い,帰無仮説を1万歩と SLR,PS の筋 活動量が同程度である,対立仮説を1万歩と SLR, PS の筋活動量が同程度ではないとした.

結果

歩行1万歩とSLRによる筋疲労度の間には有意差が認められず(P>0.05)帰無仮説が採択された.一方,歩行1万歩とPSによる筋疲労度には有意差が認められ(P<0.05)帰無仮説が棄却された.このことからSLRと歩行1万歩におけるVMの筋活動量は同程度であり,一方PSではVMの筋疲労を認めたものの,歩行1万歩と同程度には至らない結果となった.

考察

本研究は市橋ら1)による先行研究で歩行1万歩と同程度の筋活動量であると算出された運動課題(SLR,PS)を実際に行い,運動前後のVMの筋電図MPEから筋疲労度を算出することで先行研究の妥当性を検証した.統計結果から,SLRでは歩行1万歩と同程度の筋疲労を認めた.一方,PSでは筋疲労を認めたものの,歩行1万歩と同程度には至らなかった.表面筋電図によるVMと大腿直筋(以下RF)の活動を調べた先行研究では,SLRはVMよりもRFの活動が高く,PSでVMの活動が高くなることが示されている.しかし本研究では先行研究でVMが主動作筋となる動作ではなく補助筋として作用する動作でVMの筋疲労が歩行1万歩と同程度になる結果となり,SLR1000回は妥当な回数であることが考えられる.一方,VMが主に収縮するとされるPSで想定通りの結果が得られなかった要因として運動回数を重ねるうちに,代償動作が加わるなどなど再現性の確保が困難となった可能性が考えられる.1日の平均歩数との比較であることから,今後,各運動課題を1日のなかで分割して実施するなど,運動方法を変更した条件下で筋疲労度を検証していきたい.

参考文献・引用

  1. 1)市橋則明(1993):大腿四頭筋の廃用筋萎縮を防止するために必要な下肢の運動量について,体力力学42,461~464

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