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2020年度 課題研究発表会
ポスター演題

下腿三頭筋ストレッチが動的バランス能力へ与える影響

キーワード:下腿三頭筋動的ストレッチ動的バランス静的ストレッチ
理学療法士学科
桶本 竜矢/今西 季菜子/小川 塁/光村 早織

はじめに

現在,高齢者の転倒予防についての取り組みは臨床において重視されている.その中でも転倒と動的バランスと関連性が指摘されている.その,動的バランスに関与する筋の一つに下腿三頭筋が有り、下腿三頭筋の柔軟性は,バランスを崩した時の立て直しなどに関与する.

しかし,下腿三頭筋の柔軟性に関する研究において,下腿三頭筋ストレッチと静的バランス能力に関する研究はあるが,動的バランスに関する研究は少ない.

そこで私たちは,下腿三頭筋ストレッチが動的バランスへ与える影響について検討する.

対象と方法

20歳以上40歳未満の男女健常者20名.
検査手順は以下の通りに実施する.
①足関節可動域測定
②FunctionalReachTest(以下FRT)を自然立位方1)にて2回測定し,良い結果を採用する.尚,練習回数は1~2回とする.

その際,二次元動作分析装置にて体幹前傾角度,足関節底屈角度を測定する.
①,②をストレッチ前,静的ストレッチ(StaticStretch以下SS)後,動的ストレッチ(DynamicStretch以下DS)後に実施する.尚,SSとDSの間は1週間の間隔を空ける.

DSはヒールレイズを実施し,1回の間隔はメトロノーム60bpmで,底屈運動を20回とする.SSは傾斜台を用いて実施.傾斜角度は90°とし,2分間ストレッチを実施する.足底板の設定はストレッチ前の足関節背屈角度を基に設定する.

結果

リーチ距離は,ストレッチ前と比較してSS後でp<0.01,DS後でp<0.05で共に優位な差が認められた.

体幹前傾角度はSS後でp<0.05,DS後でp<0.01で有意差が認められた.リーチ距離,体幹前傾角度のSSとDSの比較では,共にp>0.05で有意差が認められなかった.

足関節底屈角度は,DS後では有意水準5%以上で有意差が認められたが,SS後では有意水準5%未満で有意差が認められなかった.

考察

リーチ距離はDS・SS後どちらも優位に増加していた.先行研究でもリーチ距離増加には体幹前傾角度が重要であると述べていることから体幹前傾角度増加がリーチ距離増加の要因と考えられる.

体幹前傾角度・足関節底屈角度が増加した要因は下腿三頭筋の伸張性向上及び筋連結による影響が考えられる.筋膜は1つの筋の作用が複数の関節の動きに影響を及ぼすため,膝関節伸展時には下腿三頭筋とハムストリングスが1つの筋膜として機能する.これによりDS後では筋連結するハムストリングスの伸張性が向上し,体幹前傾角度が増加したと考えられ.また股関節戦略のため股関節屈曲角度増加に伴い足関節は底屈位となり,足関節底屈角度が増加したといえる.

しかし,SS後では足関節底屈角度は増加しなかった.原因として傾斜台の最大背屈角度が20°であり,最大背屈位での伸張が行えなかったことが考えられる.また土井らは2)下腿三頭筋が持続的に伸張されたことにより同筋の腱紡錘が興奮し,筋収縮が抑制されると述べていることから,本研究でもSS直後で下腿三頭筋の収縮が抑制されたため,足関節底屈角度が増加せず,その状態から股関節戦略によるFRTを実施したため,体幹前傾角度,FR距離は増大したと考えられる.そのため,SSで最大背屈位での伸張方法の検討及び筋収縮の抑制を除去した状態でFRTを行うことが今後の課題である.

まとめ

本研究では,下腿三頭筋のSS,DSにより動的バランス能力が向上することが示唆された.

参考文献・引用

  1. 1)代俊ら:FunctionalReachTestの測定方法改善の試み信頼性、客観性及び妥当性の検討
  2. 2)土井眞里亜ら:静的および動的ストレッチング後に生じる足関節可動域と筋力の経時的変化

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