menu

2020年度 課題研究発表会
ポスター演題

糖尿病について知識が乏しい高齢者への食事指導

キーワード:糖尿病自己管理行動変容高齢者
看護学科
西山 莉菜

はじめに

老年期にある糖尿病患者は老化に伴う身体・認知機能の低下に加え複合疾患を併せもつ.また,人生の長い歴史に伴う多様な個々の価値観等が自己管理に影響を及ぼす.今回,糖尿病の知識が乏しく血糖コントロールが不十分なA氏を受け持った.自己管理についての説明や実際に売店へ行き食べ物の糖質を確認した結果,よい効果が得られた.事例を振り返り自分が行った看護支援が患者の行動変容につながったことは何かを説明する.

対象と方法

対象:A氏70歳代男性
診断:脳梗塞,糖尿病
経過:脳梗塞による症状はほとんどみられない.糖尿病により血糖値は130~190mg/dl台で足趾のしびれがある.売店で購入したものを食べられていた.発言から糖尿病の知識や自覚があまり感じられない.

看護の実際

看護問題として糖尿病管理についての知識不足による血糖コントロールが不十分であることを立案した.計画として,まずこれまでの生活習慣を振り返ったところ入院前の食事では1回量を多く摂取していたようだった.そして,次の食事までに空腹を感じると,間食でお菓子を食べられていたこと,糖尿病となった原因についても理解不十分であることなどから病識に乏しい印象であった.この情報と,A氏が高齢者であることを踏まえ,症状や食べ物などをわかりやすく図にしてパンフレットを作成した.初めて説明した時は「詳しいことはよくわからんが,こんな風になるのか」と反応は乏しかった.数回に渡り,パンフレットを用いてA氏と確認しながら説明したところ「この症状があるな」「この食べ物をとるときは考えないといけない」など関心を示す言動が聞かれた.その後徐々に自身の血糖値に関心を示し,数値を自ら記録するなど自己管理への意識がみられるようになった.

考察

福井は,患者と関わる上で現在の状態をよくしようと思っても,過去の状態が今の状況を作っていることが往々にしてあるため,これまでの生活を振り返ることが有効1)と述べている.A氏は実際,病態や改善方法など知識が乏しかったことから病院から提供される治療を受けるだけでその他の行動に移すことができていなかった.これまでの食生活の習慣を,理解しやすいパンフレットを用いて振り返ることで「これを食べていたからこうなったのかな」など自分自身の行動を振り返る機会につながったと考えられる.また,老年期にある患者への指導支援をする上で身体機能や認知機能を考慮し,可能な養生法を考えることが大切である2).と述べている.パンフレット説明の他,病棟内歩行や血糖測定時の値・食事内容を記録することを薦めたことはA氏の自己管理への意識の変化につながったと考えられる.

まとめ

A氏にパンフレットを用いて、疾患についての正しい情報提供を行いながら,これまでの食生活習慣を振り返ることは糖尿病の自己管理への意識変化へと繋がった.

参考文献・引用

  1. 1)2)福井トシ子ら:ライフステージから理解する糖尿病看護[事例で学ぶアセスメントのポイント].中央法規出版,東京,23,33,44,2013.

ページトップへ戻る

close