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2020年度 課題研究発表会
ポスター演題

リウマチ患者の食事摂取量増加に向けた援助 ~食事中の姿勢,献立に対する視覚的アプローチの効果~

キーワード:姿勢視覚的アプローチ食欲低下
看護学科
田中 瑞希

はじめに

関節リウマチの,食の障害は進行性の多関節障害により動作の能力低下を引き起こし,疼痛や炎症による消耗,疲労などの影響を受ける.また,機能に合わせて食形態も変化する.

生活の中で食べることは健康や生命を維持するために不可欠であるが,同時に楽しみを満たす上で重要である.今回,関節リウマチの症状により食に対する障害が生じたA氏に対して行った援助について効果の根拠を振り返る.

対象と方法

対象:A氏.70歳代.女性
診断名:多発褥瘡(仙骨部踵部臀部)経過:既往に関節リウマチあり.仙骨部,踵部に褥瘡が認められ入院となった.リウマチ症状は手指の疼痛,変形,自力体動困難が認められる状態.ADLは食事以外全介助だったが,平均食事摂取量3~4割で食欲はあるが食事を目の前にすると食欲が湧かなくなる状態だった.食事時ギャッチアップ約70度,頸部後屈位,食事形態はきざみ食(全粥)で,検査データALB2.7g/dlだった.

結果

私はA氏の食事に対する思いを傾聴し,食器のセッティングや姿勢の乱れにより食べづらさや疲労を感じていると判断した.またきざみ食により食事内容が理解しにくく,食欲が湧かない状態であると判断した.食事前のギャッチアップ後にA氏に確認しながら肘下へのクッションの挿入,頸部と後頭部へのタオルの挿入を行い,安定した姿勢と頸部前屈位が保持できるようポジショニングを実施した.また配膳後はA氏の見えやすい位置,手の届く位置に食器を調整し,毎日献立内容を具体的に患者に伝えた.その結果,食事摂取量7割~10割となり,患者からも食事が楽しみであるという発言が聞かれるようになった.

考察

A氏の食べづらさや疲労は関節リウマチの症状である関節の疼痛,変形,自力体動困難が関連していると考えた.鈴木は関節症状による食事動作の障害として「必要な姿勢を保持できない」「食べ物を把持できない」「食事を口まで運ぶことができない」と述べている1).リウマチの症状は食べづらさや疲労に影響していたと考えた.ポジショニングや食器位置の調整はこれらの状態が軽減されたことに繋がった.また小山は料理の形,色などの視覚の影響により食欲が左右されるとしている2).A氏の食形態はきざみ食であり,献立が視覚的に理解しにくいことも食欲減退に繋がり,献立内容を具体的に伝えたことはA氏の視覚に対するアプローチであり,食事内容の理解が食欲の増進に影響したと考える.

まとめ

関節リウマチの症状による疲労感の軽減や視覚的アプローチによる献立メニューの理解を促すことは食事摂取量を増加させた.また,食に対する楽しみも見出すことができた.

参考文献・引用

  1. 1)鈴木明美:関節リウマチに伴う食の障害へのアプローチ三輪書店東京105,2007.
  2. 2)小山珠美:食べる意欲,口から食べる幸せをサポートする包括的スキル第二版医学書院東京20,2017.

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