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2020年度 課題研究発表会
ポスター演題

認知症高齢者への写真を用いた回想法による認知機能向上への援助

キーワード:レビー小体型認知症回想法認知機能
看護学科
中村 成美

はじめに

認知症とは,「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで,日常生活・社会生活を営めない状態」をいう.なかでも,レビー小体型認知症は,症状として記憶障害,認知機能障害,幻視,パーキンソン症状などが挙げられる.本研究では,幻視に対して不安を感じている患者に対して写真を用いて,幻視による不安を軽減させる援助を実施した.元の生活を連想させる写真を用いた回想法で患者の認知機能の維持,向上に向けてどのような効果があったのかを検討した結果を報告する.

対象と方法

対象:A氏.90歳代.女性.
診断名:レビー小体型認知症.
経過:A市に住んでいたが,夫の他界後,本人の認知症も進行してきたため,娘夫婦と同居.その後,骨折しB病院へ入院後,C院へ転院.入院中は幻視があり,「足を虫が噛んだ」「天井にいろんな色の花がある」などの訴えがあった.

結果

幻視による不安に対して精神を安定させ,幻視症状を軽減することを看護目標として援助を実施した.精神の安定を図るため,A氏が「家に帰りたい」という気持ちを踏まえて,自宅周辺の写真を見ていただく時間を設けた.始めは何の山なのか理解できなかった.しかし,山の名前を伝えると,昔登ったことを話された.また,ふるさとのお菓子の写真を見せると,「○○団子だ!」と理解して表情が明るくなった.その際,家族で団子を食べた思い出話をされた.受け持ち当初はみられた幻視症状は回想法実施後,減少した.

考察

レビー小体型認知症であるA氏に回想法を実施したことで,自らの思い出話や昔の話に発展し,そちらに意識が集中することで幻視症状に対する訴えが減少した.回想法は,認知症高齢者のコミュニケーション能力をいかし,感情に働きかけるアプローチである1).A氏は会話には支障なく回想法の適応であったといえる.また,臥床傾向で天井ばかり見ていたが,ギャッチアップをして写真が見やすい体勢に整え回想法を実施することや,A氏の興味を引く生活に関連した内容としたことはより感情に働きかけるアプローチとなり効果的であったと考えられる.回想法の効果は情緒機能の回復,発語回数の増加,問題行動の減少などである2).A氏の口数が多くなったこと,幻視症状の減少は回想法による関わりがきっかけとなり認知機能の向上につながったと考えられる.

まとめ

A氏の家に帰りたい思いを受け止め,共に時間を過ごしながら,懐かしい地元を思い出せる回想法を行ったことは幻覚による苦痛の減少や情緒の安定,発語回数の増加に効果的であった.A氏へ回想法を用いた関わりは認知機能の向上のきっかけとなった.

参考文献・引用

  1. 1)奥村由美子:認知症高齢者への回想法に関連する研究-方法と効果-風間書房出版,東京,26,31,2010.

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