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2020年度 課題研究発表会
口述演題

Keio 版 Wisconsin Card Sorting Test と Symbol Digit Modalities Testとの関連性について

キーワード:KWCSTSDMT前頭葉機能検査
言語聴覚士学科
石川 誠子/笠田 愛祐実/森本 淳嗣/若松 容子

はじめに

Keio版WisconsinCardSortingTes(tKWCST)では,セットの変換・保持の機能などいわゆる脳の柔軟性を評価する検査である1).

SymbolDigitModalitiesTest(SDMTはCATやWAIS-IIIの下位検査の一つであり,処理速度を評価している.どちらも前頭葉機能検査である2).

KWCSTは,自閉症スペクトラム障害,注意欠陥・多動性障害との関連性など報告されており,SDMTは自動車運転評価についての報告がある.しかし,両検査間のDATA比較および検討されている研究は少ない.そこで,KWCSTとSDMTの各結果から相関関係を算出し,関連性を考察する.

対象

本校に在籍している18歳~21歳の男性25名,女性26名(平均年齢18.9歳)を対象とした.

方法

1)KWCST:
PC画面には,4枚のカードが示されている.対象者は,新たに示されたカードが「色」「数」「図形」のどのカテゴリーに属しているのかコンピュータからのフィードバックをもとに推測し,答えていく.得られた結果は,PCに保存され,達成カテゴリー数,各エラー数を収集する.

2)SDMT:
対象者に9個の図形に対応した数字を90秒間でできるだけ早く記入してもらう.その後,達成数とエラー数を収集する.

3)両検査結果を分析:
KWCSTの各結果(達成カテゴリー数,達成時間,TE,PEN,PEM)とSDMTの各結果(正答数,達成数,正答率,エラー数)を分析.

結果

KWCSTの達成カテゴリー数とSDMTの正答数,達成数,正答率と間に弱い正の相関(r=0.21)がみられた.また,SDMTの正答数,達成数,達成率とKWCSTのTE,PEN,PEMとの間に弱い負の相関(r=-0.22~-0.3)がみられた.しかし,両検査間でのエラー数などの分析を行ったが,相関関係がみられなかった.

考察

WCSTとSDMTは同じ前頭葉機能検査であるが,両検査の達成数に関する項目で弱い正の相関がみられた程度であった.これは,前頭葉の中でも機能局在が異なっていると考えられる.また,両検査間のエラーに関する分析を行ったが,相関関係がみられなかった.このことから両検査でのエラーの質が異なっていることが考えられる.よって,両検査同士を代替することは不可能であることが分かった.今後,両検査を扱う場合,それぞれの目的を熟知し,患者に合った検査を使用していきたい.

参考文献・引用

  1. 1)加戸陽子ら:健常児者におけるKeio版Wiscon sinCardSortingTestの発達的および加齢変化の検討.脳と発達,36;475-480,2004.
  2. 2)後藤貴浩:標準注意検査法(CAT)の妥当性と解釈法の検討.日本心理学会,72;333,2008.

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