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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

机上の色彩環境が作業能率に与える影響についての検討

キーワード:作業能率内田クレペリン検査色彩環境
作業療法士学科
岡村 宙斗/菊本 拓馬/竹内 祐太郎/堀 翔太郎/高木 祐貴/安木 紀之

はじめに

住空間,作業空間等において色彩環境が快適性や作業能率を決定づける一要素となっている.色彩環境による人間の短時間作業能率へ及ぼす影響について実験的な検討を行う.

方法

被験者は本校の20歳代本校学生男性3名,女性3名(白衣着用).実験室環境は,本校の602号室を使用する.実験色彩環境は,無彩色と,加法混色法3原色,赤,緑,青,減法混色系シアン,マゼンタ,黄色(色相環上ほぼ等間隔に位置づけされる赤,緑,青,黄緑,赤紫,黄の彩度の高い有彩色6色)の合計7色を選択した.検査時に机上の作業面を検査ごとに各色紙で覆い,簡易化したクレペリン検査を実施する.作業手順は内田クレペリン検査を実験のために簡易化したクレペリン検査用紙A4サイズ(70問×10行),各行30秒を単位として10回,計5分の作業を続け,休憩を2分挟み,再び1行30秒を10回5分で行う.被験者には検査順における慣れ不慣れが作業能率に影響しないように,事前に検査要領や作業になれるための計算を数回行う.この研究での作業能率とは,簡易化した内田クレペリン検査の正答数とした.

結果

作業を実施し,無彩色に対する簡易化した内田クレペリン検査の結果に対してt検定を用いて検証した.検定の結果,赤色において両側確率が0.022と0.05(5%)より小さいため無彩色に対し有意差が認められた.しかし緑,青,マゼンタ,シアン,黄色の5色においては0.05よりも両側確率が大きく無彩色との有意差があるとはいえなかった.

まとめ

人が何か作業を行う際,完全なストレスフリーな状況よりもある程度の緊張感を持たせる方が作業能率は上がるといわれている1).また、石瀬ら2)によると「赤はあまり好ましい印象ではないが、生き生きとした感じと暖かさが高い印象であり,そこから得られる気分は,覚醒感はあるが同時にかなり緊張するというものである」と述べている.このことから,今回の実験において,赤色の色彩環境が被験者に対し適度な緊張をもたらしたことで作業能率が向上したと考える.しかし今回の研究は,限定的な小集団での施行だったことや内田クレペリン検査という単純作業であったことに加え,色彩環境が心理に及ぼす影響との関連性について議論していないため,これらに配慮した研究を継続的に行う必要がある.また今後,作業療法場面において,使用物品や壁紙,照明の色といった色彩環境を変えながら研究を継続していくことで,リハビリテーションや日常生活における環境設定へと汎化させることができると考える.

参考文献・引用

  1. 1)山崎寛享ら;意思決定型作業における時間的制約がパフォーマンスに与える影響に関する研究;人間工学,39(3),123-130,2003
  2. 2)石瀬加寿子ら;壁面色の違いによる気分の変化およびへの影響の検討;日本色彩学会誌,31,24-25,2007

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