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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

ちぎり絵を用いたワーキングメモリの作業効率における検証

キーワード:ちぎり絵ワーキングメモリ作業効率
作業療法士学科
大谷 珠梨/厨子 萌香/竹中 玲奈/横山 智加

はじめに

認知機能面」に着目し,治療現場で用いられるちぎり絵を導入した作業遂行による作業効率の向上とワーキングメモリに関係があるのかを調査した.

対象

本研究に同意が得られた本学科学生の健常者20名(男性10名,女性10名)とし,年齢20.5±1.9歳(平均値±標準偏差)であった.

方法

ワーキングメモリの評価指標には三宅式記銘力検査とSymbolDigitModalitiesTest(以下SDMT)を用い,作業前後に実施した.折り紙を一枚ずつ下絵に貼り付け,下絵に記載した番号順に従うA群と規定なしで自由に行ってもらうB群に分けて実施した.B群は工程内で対象者自身が効率よく作業遂行ができるルールとした.各作業課題は,7分間の作業遂行後2分間の休憩を入れる形式で4施行繰り返した.
A群とB群間に有意差を認めるかどうか,統計解析はMicrosoftExcel2019を用いたt検定で実施した.

結果

三宅式記銘力検査は,対象者全体の正答数(平均±標準偏差)は有関係対語にてA群8.50±0.70[点]で有意差を認めず(0.24>p),B群8.16±0.83[点]でも有意差を認めなかった(0.29>p).無関係対語においてはA群7.73±0.81[点]で有意差を認めず(0.29>p),B群7.43±1.06[点]を認めなかった(0.18>p).

SDMTは,実施前後でA群89.7±1.15[点]で有意差(0.32>p)を認めず,B群88.8±1.95[点]でも有意差(0.19>p)を認めなかった.

考察

今回,ちぎり絵の作業遂行による作業効率の向上とワーキングメモリに関係があるのか,評価指標として三宅式記銘力検査とSDMTを実施した.規定した条件と自由度の高い群に分け実施したところ,双方共に実施前後で課題結果の向上(A群<B群)を認めた.A群よりもB群が三宅式記銘力検査・SDMTの達成率が作業後に向上した理由として,杉原ら1)は,能動的に効率の良い作業遂行により記憶の保持と処理が並列的に行われ,ワーキングメモリ機能に着目した認知機能検査の活性化に影響を与えたと述べている.よって7分以内に対象者自身で能動的に効率の良い動作を制御する機会が増えたことにより,ワーキングメモリ機能の活性化に繋がった可能性が考えられる.

しかし,実施前後に有意差を認めなかったことから,ちぎり絵によって得られる効果が十分意味のあるものとは考えにくい結果となった.要因として,短期的なトレーニングでは大きな効果を得るには不十分であったと考えられる.また,対象者同士で会話等があり作業遂行に集中できておらず,作業効率を考えながら実施できなかったことも考えられる.

菅沼ら2)は,1ヶ月のトレーニングによりワーキングメモリの増加だけでなく脳活動も増加する.と述べている.長期的にトレーニングを行い検証することや1人ずつの作業スペースを確保し,作業に集中できるような環境を設定することで作業効率の向上とワーキングメモリの関係性を期待できるのではないだろうか.

参考文献・引用

  1. 1)杉原勝美ら:作業目標を効率よく達成する作業遂行が認知機能面に及ぼす影響
  2. 2)菅沼和也ら:ワーキングメモリにおける短期的トレーニングの影響

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