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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動で 負荷様式の差異が全身持久力に与える影響

キーワード:最大酸素摂取量肺活量自転車エルゴメーター
理学療法士学科
大久保 香穂/河口 陸駆/杉川 亮

はじめに

多くの高齢者において,身体活動量が少ないほど生活習慣病罹患率が増え,それに伴い運動機能の低下をきたし,要介護のリスクが高まる.身体活動量を増やすためには,全身持久力が重要となる.運動中に摂取できる最大酸素摂取量(以下VO2max)は全身持久力の最も有用な指標であり,負荷漸増時の心拍応答について多くの報告がなされている1).自転車エルゴメーター負荷様式において一定負荷とランプ負荷を比較した研究の報告はあるが,一定負荷と多段階負荷を比較した研究の報告は少ない.そこで本研究では自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動を行い多段階漸増負荷様式と一段階負荷様式の差異が全身持久力に与える影響について調べる.指標としてVO2maxに加え,酸素の取り込む量が多くなると持久力が上がると推測し肺活量(以下VC)を測定する.

対象と方法

男女健常者12名とし,一段階負荷様式(A群)と多段階漸増負荷様式(B群)に分類した.期間は両群4週間とし,週2回行う.VO2maxは15×最大心拍数÷安静時心拍数の計算式で求め,VCはスパイロメーターで測定する.VO2maxとVCの測定は研究前日,研究終了後翌日の計2回行う.VO2maxとVCの変化について対応のないt検定を用いて検討する.

結果

VO2max0.05<0.2623・VC0.05<0.93238・脈拍0.05<0.91804であった.以上の結果より,多段階負荷様式と一段階負荷様式の間に有意差はみられなかった.しかし,VO2maxにおいて一段階負荷様式に比べ多段階負荷様式の平均値で増加傾向がみられた.また,ボルグスケールの平均値については,一段階負荷様式で大いに減少がみられた.

考察

VO2maxにおいて一段階負荷様式に比べ多段階負荷様式が増加した.先行研究では,一定負荷量でのバイタルサインの変化として運動開始後数分収縮期血圧・脈拍数の値が上昇するが,その後定常状態となり,下がっていく結果が得られることが多いとある.それに対し多段階であると負荷量が変化するため呼吸数,脈拍,血圧が変化すると考えられる.このことから,一段階負荷様式では酸素の取り込み量が定常化し,多段階負荷様式では負荷の変化に伴い酸素の取り込み量が変化するためであると考えられる.VCが増加しなかった原因として,VCは胸郭の硬さや呼吸筋力に影響を受ける.これが良くあてはまるのが健常者よりも遥かに呼吸筋力が弱い病的状態の場合である2).対象である健常者では呼吸筋力が正常以上で,標準的な肺・胸郭であるためVCにはあまり影響を与えない可能性がある.本研究ではエルゴメーターを用いた全身持久力運動であったためVCに有意差が出るほどの成果が挙げられなかったと考えられる.また,本研究では対象者がそれぞれ6名ずつと少人数であったため有意な差がみられにくかったと考える.そのため,症例人数,期間を増やし検討する必要があると考える.さらに,呼気ガス分析装置で測定することが正確な評価をする上で有用であると考える.

参考文献・引用

  1. 1)山崎健:反復される漸増漸減型自転車エルゴメーター負荷への心拍応答,新潟大学教育人間科学部,2006
  2. 2)解良武士:呼吸筋トレーニングによる持久性能力の向上の可能性:理学療法科学,24(5):767-775,2009

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