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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

要支援、要介護高齢者の移動能力と外出状況について ~乖離の有無と関連因子の考察~

キーワード:外出移動能力高齢者
理学療法士学科
勝原 麻衣/衣笠 葉那巴/武田 紗季/村尾 亜美

はじめに

鳥取県では高齢化に伴い要介護高齢者が増加傾向である.高齢者の日常生活動作能力維持のためには日常生活における活動性,特に屋外までの外出は有益であり1),要介護者では,個人の日常生活動作能力よりも環境要因が外出頻度低下に関連すること2)を示唆されている.しかし、高齢者の移動動作能力と実際の外出状況との乖離について考察した報告はない.そこで本研究では,地域在住高齢者の移動能力と実際の外出状況との間に乖離があるかを調査し,環境がどのように影響しているのかを推測する.

対象と方法

1)対象:鳥取市内のデイサービスに通所されている要支援1.2,要介護1.2レベルの高齢者21名.移動動作が可能で本研究の主旨をご理解いただける者とした.移動動作はFIMにおける「移動」が6レベル以上とする.

2)アンケート調査:個別のヒアリング調査を実施した.アンケート内容は1性別,2年齢,3介護度,4家族構成,5住宅形態,6介護保険サービス利用内容及び頻度,7移動動作,8外出状況,9外出目的,10外出支援サービスについての10項目とした.

3)分析:アンケート結果を集約し相関分析を行う.外出頻度を順序尺度,環境因子を名義尺度とし,検定にはカイ2乗検定を用いた.

結果

アンケートには21名(男性:12名,女性:9名)から回答が得られた.要介護度は要支援1,2が13名,要介護1,2が8名であり,外出頻度はほぼ毎日8名,週3~4回程度3名,週1~2回程度8名,月2回程度2名であった.家族構成は独居6名,配偶者との同居6名,子ども世帯との同居9名,FIMにおける移動能力は7点が10名,6点が11名であった.外出状況と環境との関係性の分析は,カイ2条検定を用いて検定し,1介護度(p=0.1>0.05),2家族構成(p=0.3>0.05),3FIM(p=0.5>0.05)と有意差は認められなかった(p>0.05).

考察

調査対象者は,移動動作能力が独歩・歩行補助具を使用し自立レベルであるのに対し,毎日外出している者は8名,週3~4回程度は3名と1週間のうち半分以上外出しているのは約半数に留まり,その他の9名は週2回以下と実際の移動動作能力との間に乖離がみられた.統計結果から外出頻度と介護度,家族構成,補助具の使用などの因子による有意差はなかった.本研究を実施するにあたり,介護度が高い群において移動動作能力が低く,また介護度が低い群においては家族による過介助などにより外出頻度が減少し,実際の外出状況との間に乖離が生じていると予測していたが,統計結果から,介護度・家族の有無は外出頻度に関連していないことが考えられる.しかし,対象施設がリハビリ特化型デイサービスであり,日頃から自発的な活動を行っている方が多いことが調査結果や分析に影響した可能性は否定できない.

今後の課題として,対象者の属性の偏りが生じないよう対象施設や人数を増やすこと,外出頻度と関連のありそうな環境因子を増やし分析を行う必要があると考えられる.

参考文献・引用

  1. 1)河野あゆみら:地域虚弱高齢者の1年間の自立度変化とその関連因子.日本公衆衛生雑誌,47(6):508-516,2000.
  2. 2)外山祐輔ら:高齢者外出支援について−介護度から分析−.
  3. 3)加藤剛平ら:地域在住要介護者等の外出頻度に関連する環境因子―通所リハビリテーション利用者に着目して.理学療法学,38(1)17‐26,2011.

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