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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

重錘を用いた横隔膜トレーニングの介入効果について

キーワード:COPD呼吸筋トレーニング腹部重錘負荷法
理学療法士学科
大谷 橘平/宮島 依吹

はじめに

日本では,高齢化に伴い慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が増加している.COPD患者では重症化に伴い吸気筋やバランス能力が低下し,ADLを阻害する因子になると指摘されており呼吸機能のみならず体幹機能に対するアプローチも重要である.近年,横隔膜の体幹安定筋としての機能も重要視されている.呼吸筋トレーニングにおける横隔膜に対するアプローチは腹部重錘負荷法や吸気抵抗負荷器具を用いた方法などがある.今回は比較的実施しやすいため,腹部重錘負荷法に着目した.先行研究において腹部重錘負荷法の効果を示す文献があるが、即時効果を見た研究で長期的介入を行った研究は少ない.また、横隔膜に対するアプローチが重心動揺に与える影響について検討した研究も皆無である.そのため本研究では,横隔膜トレーニングに腹部重錘負荷法を用いて長期間による介入が呼吸機能,重心動揺に与える影響を解明すること,適切な負荷量を検討することを目的とする.

対象および方法

対象

日常的にトレーニングを行っていない若年健常者(男性:19人,女性11人,計30名,18~22歳)

方法

10RM群,2kg群,コントロール群に各10名,ランダムに分け,介入前,介入直後,2,4週に呼吸機能,重心動揺を測定する.10RM群1)は膝立て背臥位で上腹部に重錘を乗せ,横隔膜呼吸が完全に10回行える負荷量を決定し,これを横隔膜の10RM(10repetitionmaximum)とし,10RMの50,75,100%で各10回,計30回を2~3回/週の頻度で4週間行う.2kg群は負荷量を2kgと設定し1日10回×3セット計30回を2~3回/週の頻度で4週間行う2).呼吸機能と重心動揺を測定し,長期的な介入効果の結果と介入群とコントロール群の比較はそれぞれ分割プロット分散分析を用いて比較,検討する.

結果

呼吸機能,重心動揺共に有意差は見られなかった.平均値を見ると肺活量では10RM群は4.25ml→4.15ml→4.05ml→4.03ml,2kg群では3.70ml→3.61ml→3.45ml→3.42mlと呼吸機能では徐々に低下した.重心動揺では開眼時の軌跡長において10RM群は531.24mm→508.53mm,2kg群では541.3mm→506.91mmと改善が見られた.

考察

今回の研究では呼吸機能は徐々に低下する傾向があり,重心動揺では改善傾向が認められた.吸気筋トレーニングとしての腹部重錘負荷法はエビデンスレベルが低く,呼吸筋に適切な抵抗負荷が加えられているのかが証明できない事や,重錘負荷により横隔膜の可動域が制限されたことが要因ではないかと考える.

重心動揺については改善が見られた.これは横隔膜が働きインナーユニットが活性化された事で体幹が安定化し重心動揺の改善が見られたと考える.以上の結果より腹部重錘負荷法の長期的介入は呼吸筋としての横隔膜トレーニングには効果は期待できないが体幹安定筋の横隔膜トレーニングとしては効果が得られると考えられる.今後の課題として,対象者の人数や年齢層を広げて行うことや実際の患者での臨床研究を行いさらにデータを収集し腹部重錘負荷法による効果を明らかにする必要があると考える.

参考文献・引用

  1. 1)千住秀明:呼吸リハビリテーション入門.第4版,診療文庫,福岡,140,2005.
  2. 2)田村泰一:腹部重錘負荷法が有する横隔膜移動距離の増大効果.第48回日本理学療法学術大会抄録集,40(2),2013.

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