menu

2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

湿熱刺激による筋疲労耐性の検討

キーワード:湿熱ホットパック皮膚表面温度筋疲労耐性
理学療法士学科
池ノ内 拓磨/杉村 萌恵/田西 大暉/山本 宗暉

はじめに

筋疲労はパフォーマンスの低下や傷害発生の原因の一つと指摘されている.近年,温熱刺激によるプレコンディショニングが生体の細胞に関わるダメージを軽減する方法として推奨されている.中でも湿熱刺激(MoistHeatStimulation以下:MHS)によるプレコンディショニングは筋疲労耐性効果がより得られやすいとされている.先行研究では,20分の乾熱ホットパックで筋疲労耐性が60秒程の効果が得られたと報告しているが,60秒以降の筋疲労耐性効果の持続時間,皮膚表面温度は測定されていない.そこで本研究は,深部加温効果が高く,血流量増加がみられる湿熱ホットパックを用いて筋疲労耐性の持続時間を表面筋電図と皮膚表面温度の変化に着目し研究を行った.

対象と方法

本研究は,18~20歳の健常な男性20名を対象とした.評価はホットパックを施行する(以下:MHS条件)とホットパックを施行しない(以下:コントロール条件)の2条件とし,MHSの標的筋を利き足の大腿部前面とした.MHS条件は筋疲労耐性評価を開始するまでの平均時間を算出し,筋疲労耐性の持続時間を測定.2条件の終了直後にBiodexを用いて大腿四頭筋の最大随意等尺性収縮時筋力(MaximumVoluntaryIsometricContraction以下:MVIC)を測定した.その後,50%MVICに相当する大腿四頭筋筋力を60秒間発揮させた.評価は表面筋電図を用いて開始5~10秒までの5秒間(以下:前期),50秒後~55秒後までの5秒間(以下:後期)の2時点で筋疲労耐性評価を行った.皮膚表面温度の変化はサーモグラフィを用いて温度変化を計測した.統計処理は対応のあるt検定を用いた(有意水準5%未満).

結果

各条件の前期,後期を比較した結果,コントロール群では周波数が前期70.18±7.43,後期61.59±6.31(p<0.01).積分値は前期0.0015±0.0007,後期0.0018±0.0008(p<0.01).MHS条件は周波数が前期73.57±8.15,後期66.69±7.62(p<0.01).積分値は前期0.0014±0.0005,後期0.0014±0.0004(p>0.05).MHS条件でのみ積分値に有意差がみられず,前後期での筋動員数に変化がなかったことが示された.なお,ホットパック施行後から筋疲労耐性評価開始までの時間は平均4分24秒であった.皮膚温度変化は,コントロール群が運動前31.3±1.33,運動後30.6±1.05(p<0.01),MHS条件が運動前36.6±1.05,運動後34.4±0.75(p<0.01)であった.

考察

今回,MHS後の等尺性運動で周波数が有意に低下し,積分値は増加しなかった.乾熱ホットパックのような表在性温熱による温熱刺激は,局所の皮膚血管においてより顕著な血管拡張をもたらすが,筋組織の温度上昇には時間がかかるとされている1).しかし本研究では,深部加温効果が高く,血流量の増加が得られやすいMHSを使用したことで,皮膚表面温度の上昇に伴い深部加温効果を得られ,筋疲労物質の灌流が促されたと推察した.筋疲労の検出は,表面筋電図の積分筋電図の増大,周波数分析の低周波化が用いられている.しかし本研究では周波数分析で低周波を認めたが積分値は増大がみられなかったことから筋疲労耐性を獲得していると考えた.また,深部加温によって表層への熱放散を防げたことで,効果的な筋疲労耐性を獲得できたと考えた.加えて,ホットパック施行後から筋疲労耐性評価開始までの約4分経過後に筋疲労耐性効果の獲得を認めており,60秒以降の筋疲労耐性持続時間を確認することができた.

参考文献・引用

  1. 1)湯浅敦智,吉田英樹:運動前の温熱刺激が筋疲労耐性に与える影響.理学療法科学27(6):623−627,2012.

ページトップへ戻る

close