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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

臥床傾向のパーキンソン患者に与えた学生の影響

キーワード:パーキンソン病精神的援助身体的援助
看護学科
岸 奈緒美

はじめに

パーキンソン病の症状の特徴の一つとして,日々の症状の変化が大きいことがあげられている.A氏の精神状態も同様であったが,運動障害に対して身体機能の維持を目的に,ベッド上でできる塗り絵を通してかかわった.結果,学生が想定していた以上の良い反応が見られたため要因や学生の関わりを振り返るために今回研究テーマとした.

事例紹介

A氏60歳代男性
パーキンソン病で状態悪化のため経口摂取不可能となり嚥下訓練のリハビリ目的で入院.

左臀部に褥瘡のため保護材を貼付し,見守り時以外では両手首に拘束帯が使用(経鼻経管栄養のチューブの自己抜去,ベッド柵をとるなど危険行動のため).無表情で,発語や会話も困難.妄想・幻覚に左右された言動もあり,笑顔が見られる日,精神症状が強く出て語気の荒い日,1日中反応がない日もあった.ADL全介助で膀胱留置カテーテル留置中.性格は頑固でこだわりが強い.

看護の実際

身体的,精神的症状はあったが,意識や聴覚は保たれているため,訪室時やケア時には必ず声をかけ手を握ったりした.また,学生がついている場合は拘束帯の解除が可能だったため,時間があればA氏と一緒に過ごした.妄想・幻覚の出現時には否定せず,受容・傾聴し関わった.

塗り絵を行うにあたり意欲・関心を引き出すため,A氏の趣味であった釣りから魚の塗り絵を学生が自作するとA氏は大変喜び,自ら「塗ろうか」と興味を示した.始めると明らかに表情,行動が変化した.左手で紙をしっかり押さえ,同じ色でも濃淡をつけ,違う色を重ね塗りし,また細かい部分も丁寧に塗っていた.その間背筋を伸ばし,顎を引いた姿勢であったため,受け持ちの看護師に報告すると「今なら経口摂取ができるのでは」と摂食・嚥下の認定看護師の確認の結果,とろみ付きのお茶を認定看護師の介助で可能となった.5口ほどだったが大きな変化だった.その後も「毎日塗り絵がしたい」,「ほかの絵も描いてきて」と意欲は継続した.離床時間が拡大し,言語聴覚士によるリハビリで大きな声が出せるようになり,車椅子で30分ほど散歩するなど変化が見られた.

考察

コミュニケーション能力が低下し,不安を増強しやすいパーキンソン病患者にとって学生が精神的理解者となっていたことが考えられる.「看護者はパーキンソン病である自分を受け入れている患者に対しても常に関心を持ち続け,患者に受容的にかかわりながら身体的,精神的援助を提供していくことで,患者の疾病受容を促進し,気持ちの揺れを小さくすることができる」1)とあるように,学生の関わりがA氏の日々の状態変化の振れ幅を小さくし,よりA氏らしい生活へとつながった.

結論

日々,状態が変化するA氏に対して傾聴・受容の姿勢で,時間的にも可能な限り関わること,A氏の生活史に沿った看護を行うことは,日々の状態の振れ幅を小さくさせ,身体的機能を向上させ離床をうながすことにつながった.

参考文献・引用

  1. 1)今村美葉ら:パーキンソン病患者の疾病受容過程と患者援助について.千葉大学看護学部紀要,19;79-87,1997.3

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