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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

精神障害者との対人関係の構築 ~共に歩んでいくことの大切さ~

キーワード:ニード患者関係精神患者
看護学科
澤田 莉奈

はじめに

精神障害者との関係性で,当初関わりが学生の視点となっていることに気付かずにいた.指導者からの指摘で自己を振り返り,新たな関係を築くことができた.精神疾患は対人関係により生じるものであり,その治療も医療者と患者との対人関係の中で行われる.そこで振り返りを今後の看護につなげるためにこの事例を取り上げる.

事例紹介

A氏:20歳代女性.初発の急性一過性神経障害.入院時,気分高揚・不穏・多動・爆発性のため急性期病棟で一時隔離されていた.受け持ち時は解放病棟で入院治療を送っている.他患者の表情や発言を気にする神経質で真面目な性格.

看護の実際

当初は受容・共感・傾聴的な態度を心掛け,患者の反応も穏やかで描いた絵を見せ,良好な関係であると考えていた.だが指導者から「学生さんとの関りでAさんが少し苦痛に感じているみたい」と助言があった.関りを振り返ると,関係性をよくしようと患者のすぐ傍に座り,相手の目をよく見て会話していた.メンバーにも確認すると,患者には声のトーンが高いもしれないと指摘された.そして学習していたケアの原則・法則を読み返すと,心理的にも物理的にも互いの境界を守るという事は,双方の安全を守ることであり信頼の基礎でもあるとあった.

そこでパーソナルスペースでは徐々に近づき,少し間を空けて座り,声も少し低いトーンでゆっくりと話すよう心掛けた.場合によってはデイルームではなく落ち着けるよう,少し離れた静かな場所を選んだ.すると,Aさんから学生に体を向け,視線も合わせるようになった.また入院中や退院後の不安など自らの気持ちについて話してくるようになり,さらに,自らの病気について原因や治療,対処法,再発防止について作成したパワーポイントを見せ,「再発の対処のため,家族や友人に症状を気づいてもらえるようにしたい.」と発言があった.そこでAさんの情報と,学生が調べた内容を共有し,家族や友人の協力が得られるよう一緒にポスター作成を行った.

考察

患者・看護師の関係プロセスをペプロウは1方向付けの局面2同一化の局面3開拓利用の局面4問題解決の局面の4段階としている1).当初自分は,患者を詳しく知りたいという学生のニードで接しており,患者のニードを考えていなかった.助言から自身の言動を見直し,患者にとって安心できる援助者としての存在になり,方向付けの局面へと繋がったと考える.次に自分が患者のニードにこたえられる存在として同一化の局面へと進み不安を学生に話せるようになったと考える.

結論

実習する学生という視点だけでは,患者との治療的関係は築くことができない.今回精神障害者との対人関係であったが,患者・看護師の関係プロセスの1段階である方向付けの局面は患者を3側面から理解するだけでなく,同時に患者のニードを知ることが大切であった.そしてこの1段階が特に重要な位置を占めることが理解できた.

参考文献・引用

  1. 1)正木治恵ら:看護理論の活用看護実践の問題解決のために.医歯薬出版株式会社,東京,50-60,2014.
  2. 2)池田明子ら:ぺプロウ看護論看護実践における対人関係理論.第1版,株式会社医学書院,東京,2013.
  3. 3)小林富美栄ら:ペプロウ人間関係の看護論.第1版,株式会社医学書院,東京,2013

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