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2021年度 課題研究発表会
ポスター演題

終末期患者の苦痛に寄り添う看護 ~全人的苦痛への手足浴の効果~

キーワード:上顎洞がん手浴疼痛緩和足浴
看護学科
松川 歩未

はじめに

がんの終末期は様々な苦痛や問題が絡み合い全人的苦痛をきたすため,終末期における疼痛緩和が重要である.終末期がん患者の清潔ケアにより患者の意欲がもてる状況を創り出し,患者の反応を探りながらケアすることにより心地よさをもたらす.手浴・足浴といった温浴の技術は,用いることにより,生体に多くの好影響をもたらす.自律神経系への影響などの生理・心理的効果,疲労回復・緊張緩和などのリラクゼーション効果,疼痛倦怠感等の症状緩和に関する効果がある.このように温浴は,日常生活の質を改善するのみならず,温熱刺激による苦痛症状の緩和など1),看護治療的側面も併せ持つ,高い可能性を秘めた援助技術である。今回受け持った患者はがんの終末期で,麻薬貼用薬を使用し疼痛緩和を行っていた.疼痛による身体的苦痛,認知症により不穏症状があった.ケアの介入により疼痛緩和や不安の訴えについて傾聴による関りから苦痛緩和につなげることができたため,この事例について報告する.

事例紹介

対象:Aさん90歳代女性
診断名:上顎洞がん,アルツハイマー型認知症,大腿骨転子部骨折保存的治療
性格:人と話すのが好きで,常に人との関わりを求めている.さみしがり屋
経過:がんによる痛みは麻薬貼用薬を使用し疼痛緩和ができていた.しかし日に日に腫瘍が大きくなっており左顔面が突出し左眼を腫瘍が圧迫し眼球結膜から血液の流えんがみられ,認知症がありテーブルを叩くなど大きな声が出ている事がある.患者は病気への認識がなく今自分がどのような状態なのか理解していない.

看護の実際

がんの終末期であり,大腿骨転子部骨折もあるため,ベッド上で臥床している患者にどう介入すればよいか迷い褥瘡予防の看護介入を考えていた.しかし指導者や教員の助言で方向性の違いに気付き全人的苦痛緩和の介入に変更した.受け持ち5日目に「死にたい」と言われ困惑してしまった.眼球結膜からの血液流えんにより手に血液が付着した状態であるのが気になり手足浴を行った.すると温泉好きであること,お話好きと分かり,また,機嫌の良いときは歌を唄うなどされるようになった.その他,顔に腫瘍があり鏡を長い間みていないこと,今の苦しい状況を話されるようになった.対象の表情が和らぎ昔話をされながら涙を流されることが多くみられた.

考察

足を湯に浸すことはリラックスした状態にすると布施らは検証している1).手足浴による快の刺激と,学生のタッチングやコミュニケーションによるリラックス効果や気分転換になるような時間を通して不安や疼痛緩和に結び付いたと考える.また,傾聴により不安や孤独感など精神的苦痛の緩和に繋がったと考える.

結論

今回の実習で学んだことは人生の背景をみながら対象を尊重して関わり対象が何を望んでいるのかを常に考え続けることである.結果,QOLの向上につながった.今後も看護を行う上で対象が何を望んでいるのか考えQOL向上を目指した看護を提供できるようになりたい.

参考文献・引用

  1. 1)布施敦子,大佐賀敦(2003):足浴に関する生理心理学的検討(9):高齢者における気分状態・指尖容積脈波への影響,日本看護研究学会雑誌,26(3),312.
  2. 2)石毛明子,河野麻:倦怠感のある患者のリラクゼーション効果についての検討アロママッサージを実施して,旭中央病院医報,30,52-54,2008.

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