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2021年度 課題研究発表会
口述演題

日刊工業新聞社賞

粗大な上肢運動が若年健常者のバランス能力に与える影響

キーワード:バランス能力上肢運動若年健常者
作業療法士学科
小谷 真由/清水 大輔/千村 明日香/松浦 敦広/水口 由依/安田 真唯

はじめに

入は広く認知されているが,作業療法では上肢に介入することが多い.そこで,上肢運動によりバランス能力の向上が期待できるのか,若年健常者への影響を実験的に調査した.本研究は一昨年から引き継いだ研究であり,上肢運動の効果が立証された.そのため,運動時間に焦点を当て時間ごとの効果の有意差を検証した.

対象

本研究に同意が得られた本学科学生の健常者24名(男性12名,女性12名)とし,年齢は19.5±1.5歳(平均値±標準偏差)であった.

方法

バランス能力評価指標にはFunctionalReachTest(以下FRT),TimedUpandGoTest(以下TUG)を用いた.効果の有無を検証する上肢運動は,両肩関節90°屈曲位にて両手で反対側の肘を掴ませた状態から両手を左右へ可動域いっぱいに反復させる粗大な両側動作とした.その際,頭頸部・体幹・下肢の動きを最小限に抑えるため背臥位,運動のタイミングは60BPMのメトロノームのリズムで2秒ごとに1往復させるものとした.被検者について,上肢運動を各0.5分・1分・3分行う3群に分け実施した.

FRT・TUGの測定は,I群(1上肢運動0.5分介入前,2上肢運動0.5分介入後),II群(3上肢運動1分介入前,4上肢運動1分介入後),III群(5上肢運動3分介入前,6上肢運動3分介入後)と各群で2回実施した.1-2間,3-4間,5-6間の時間配分はバランス能力評価や上肢運動による介入の有無などによって差が生まれないよう,各実施項目のタイミングを決めて実施した.

1-2間および3-4間,5-6間について介入後に効果が見られたかMicrosoftExcel2019を用いたt検定で効果判定を行った.また,I群—II群間,II群—III群間に有意差を認めるかどうか,統計解析はWelchのt検定で各群間の有意差を検証した.

結果

FRTについては,1-2間,3-4間,5-6間において有意差は認められなかった.よってI群—II群間およびII群—III群において有意差はみられなかった.

TUGについては,1-2間では弱い有意差を認めた(0.01>p)3-4間では強い有意差を認めた(0.05>p)5-6間において有意差を認めなかった.I群—II群間において有意差を認めなかった.II群—III群間において有意差を認めなかった.

考察

今回,バランス能力評価指標として上肢リーチのパフォーマンス課題であるFRT,歩行を伴うパフォーマンス課題であるTUGを実施した.今回行った上肢運動は,肩甲胸郭関節を中心とした,胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節の複合運動であり,一定リズムで反復させることで上肢可動性・運動性の向上,上肢運動を支えるための体幹支持性向上による体幹運動性の向上などが期待できる運動であった.TUGでは1-2間,3-4間で有意差が見られた.しかし,I—II群間およびII—III群間において有意差は見られなかった.運動介入前後では効果がみられたものの,時間を変えることによる効果の是非は見られなかった.

この度は上肢運動の実施時間に着目し,効果の比較・検討を行ったが,リズムや実施回数に着目することでより効率的な実施方法が検討出来ると考える.また,効果判定にこれまでと異なるバランス能力評価指標を用い,本研究の上肢運動がバランス能力へ与える影響を再検討することで,上肢運動性への介入意義を再確認できるのではないだろうか.

参考文献・引用

  1. 1)望月久:立位姿勢の安定感と重心動揺計によるバランス能力評価指標との関連性.文京学院大学保健医療技術学部紀要,第2巻;55-60,2009.
  2. 2)望月久ら:臨床的バランス能力評価指標に関するアンケート調査報告.理学療法科学,24(2);205-213,2009.
  3. 3)中村隆一編:基礎運動学.第6版,医歯薬出版株式会社,東京,366-372,2003.
  4. 4)RegiBoehme,OTR編:上肢-上部体幹の機能改善評価と治療アプローチ.株式会社協同医書出版社,東京,18,2009.

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