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2021年度 課題研究発表会
口述演題

滋慶教育科学研究所 奨励賞

足関節底屈筋力検査法の再考

キーワード:筋力表面筋電図足関節底屈
理学療法士学科
足立 龍之介/岸本 泰平/大黒 咲葉/初田 友

はじめに

近年,歩行は疾患の予防として重要視されており,櫻井ら1)は84歳までの後期高齢者では足関節底屈筋群の筋力と歩行動作能力との間には有意な相関があると示している.これらのことから,足関節底屈筋群の筋力は歩行を行う上で非常に重要である.その中で徒手筋力検査(以下:MMT)は臨床でも頻繁に実施される筋力検査であり,0~5の6段階で筋力を評価する.段階5(Normal)の判定には「患者が自動運動の全可動域を重力に抗して動かすことができ,セラピストによる最大抵抗に抗してそのテスト肢位を保持できる段階」とあるが,足関節底屈のMMTにおいて段階2(Poor)の検査法はその基準に則っているものの段階5の判定にはならない.

そこで本研究では,複数ある足関節底屈筋力の検査法における筋活動量を比較することで,検査の適性について再考することを目的とした.

対象および方法

<対象>健常男女各12名,計24名(18-30歳)1グループ4人で計6グループに分ける.

<方法>Danielsらの新・徒手筋力検査法第10版に掲載されている足関節底屈筋力の検査方法のうち,1段階3~5の検査(以下:方法1),2段階2の検査(以下:方法2),3日本理学療法士学会が平成26年に発行した「徒手筋力検査」におけるグレード3以上の検査(以下:方法3)の3つの検査法にて,筋活動量を表面筋電図計を用いて測定する.下腿後面に表面筋電図計の電極を貼付し,方法1,方法2,方法3をランダムに行い,腓腹筋の外側頭と内側頭の筋活動量を測定する.実施する下肢については非利き足とした.筋活動量の測定は,ADINSTRUMENTS社のPowerLab26T(Model:ML4856)を用いて行う.本研究では平均パワー周波数(以下:MPF)にて各方法での筋力発揮の程度を求める.得られたデータについては反復測定分散分析にかけた後,多重比較検定を行い比較検討する.

結果

被検者は計24名,年齢は平均19.25±2.0歳,体重は男性で平均69.3±14.8kg,女性で平均50.9±4.0kgであった.方法1においては被検者全員が目標回数の25回を実施することができた.また,測定下肢は全員左脚であった.Shapiro-Wilk検定で正規性を確認し反復測定分散分析で効果が認められたため(p<0.05),多重比較検定を行った結果,内側頭と外側頭ともに方法1と方法2では有意差がみられ(p<0.01),また方法2と方法3においても有意差がみられた(p<0.01).

考察

今回,足関節底屈のMMTに疑問を持ち従来通りの25回底屈運動を実施する方法とMMTでの段階2の検査方法に加え,理学療法士学会が提示している方法を比較することによって,より筋力発揮を促すことができる方法の検討を行った.それらを検証した結果,方法2が最も筋力発揮を促すことができると分かった.筋収縮により生じる張力は求心性収縮よりも等尺性収縮の方が大きくなる2).また,筋力は関節可動速度に影響を受けるため,関節運動が遅いほど筋力は発揮される3).このことから,等尺性収縮で測定している方法2が最も筋力検査に有用であるのではないかと考えた.本研究では膝関節完全伸展位で全ての検査法を実施していることから,二関節筋である腓腹筋の関与は大きいと考え,膝関節完全伸展位で行う筋力検査において等尺性収縮を用いた検査法は妥当であると推察する.

参考文献・引用

  1. 1)櫻井陽子ら:最大一歩幅や歩行動作における下肢筋群の加齢に伴う役割の変化.理学療法科学32(2);171-175,2017.
  2. 2)千住秀明:運動療法I,神陵文庫,p121,2017.
  3. 3)細田多穂:運動学テキスト,南江堂,p361,2013.

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