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2021年度 課題研究発表会
口述演題

想いを尊重した援助 ~意欲とセルフケア能力が向上した一例~

キーワード:口腔ケア意欲誤嚥性肺炎高齢者
看護学科
辻井 真里花

はじめに

半身麻痺のある患者は,麻痺側に食物残渣が残りやすいことや高齢者では渇中枢の感受性の低下による水分摂取量の減少,唾液分泌の減少により口腔内が乾燥しやすい状況にある.今回,左半身麻痺による嚥下機能低下により誤嚥性肺炎のリスクが高い患者を受け持った.関わりの中,現在の口腔ケアに対する想いや退院後の家族に対する想いが聞かれた.その想いを尊重したセルフケアの援助を行ったところ,意欲とセルフケア能力の向上がみられたため,その要因を明らかにする.

事例紹介

A氏90歳代男性心原性脳塞栓症にて入院中であり,介護認定申請中.左上下肢麻痺を主訴としておりADLは見守りと一部介助にて実施.退院後は妻(要介護2),息子と自宅で生活,週3~4回小規模多機能型居宅介護に通所予定.認知力に問題なく,自分のことは自分で納得して決めたい性格.以前,管理職を務めており真面目で社交的であり,責任感が強い.現在の状態は,歩行器で移動可能,デイルームで食事をとり食後その場でガーグルベースンを用いてほぼ全介助にて口腔ケアを受けている.誤嚥リスクあるが含嗽は可能.上下総義歯の不具合と麻痺により食後の残渣が著明である.退院後は「息子には迷惑かけられん」や「こんなん(ガーグルベースン)使ってこんなところ(デイルーム)でしてもすっきりせん.不潔だしなあ」という発言が聞かれる.A氏90歳代男性心原性脳塞栓症にて入院中であり,介護認定申請中.左上下肢麻痺を主訴としておりADLは見守りと一部介助にて実施.退院後は妻(要介護2),息子と自宅で生活,週3~4回小規模多機能型居宅介護に通所予定.認知力に問題なく,自分のことは自分で納得して決めたい性格.以前,管理職を務めており真面目で社交的であり,責任感が強い.現在の状態は,歩行器で移動可能,デイルームで食事をとり食後その場でガーグルベースンを用いてほぼ全介助にて口腔ケアを受けている.誤嚥リスクあるが含嗽は可能.上下総義歯の不具合と麻痺により食後の残渣が著明である.退院後は「息子には迷惑かけられん」や「こんなん(ガーグルベースン)使ってこんなところ(デイルーム)でしてもすっきりせん.不潔だしなあ」という発言が聞かれる.

看護の実際

最初に,現在の口腔ケアに対して爽快感や満足感が得られていないという想いを確認した.その後,現在のセルフケア能力と口腔ケアの実施方法について評価した.評価した結果と想いを統合した結果,歩行器で洗面所まで行き,洗面台で椅子に座った含嗽を提案した.すると,「それがいいです」という発言と前向きな表情が見られた.また,自宅に帰ってからも自力でできる方法や,誤嚥性肺炎の危険性についても説明を行った.実際は義歯を外して含嗽を3回程度行うと口腔内の残渣が消失した.麻痺があるため義歯洗浄は介助者が行い,含嗽で取れなかった部分にスポンジブラシを用いた介助を行うのみで,自分でできる部分が増加した.Aさん自身も鏡を用いて口腔内を観察することで退院後も継続できるよう工夫した.そして,以前は聞かれなかった「すっきりした」や「やっぱり気持ちいい」という発言と笑顔が見られるようになった.

考察

木村1)は「個別的な患者の不安やストレス・苦痛にいかせる思いやり,察して配慮できること,小さなことから工夫して試みることが重要である」と述べている.患者の抱く意欲や,現在のセルフケア不足は患者本人がもつ素質や能力だけでなく,おかれた状況や環境も影響している.自分のことは自分で納得したうえで決定したいというAさんを尊重し,情報収集したことで想いに寄り添った形で方法を提案・実践することができ,セルフケアに対する意欲と能力の向上につながったと考える.また,息子に迷惑をかけたくないという想いや,誤嚥性肺炎の危険性への理解から動機づけが行えたことも要因の一つだと考える.そして現在の状態を正確に把握・評価したうえでセルフケアが退院後も継続できるよう介入したことも,納得して取り組むことにつながったと考える.

結論

患者の想いに寄り添い,尊重することで能力を最大限にいかす環境が設定でき,意欲とセルフケア能力の向上につながることがわかった.

 

参考文献・引用

  1. 1)木村陽子:入浴や清拭を拒否する患者の看護.看護技術,Vol.66;27,2020.
  2. 2)永田美奈加ら:透析患者の健康管理上の意欲向上につながった看護師のサポート.秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要,18(1);55-63,2010.
  3. 3)岡堂哲雄ら:老人患者の心理と看護.初版,中央法規出版,東京,2004.

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